序
徳島県博物館は昭和34年12月10日に開館し,本年をもって30周年を迎えましたが,その建設は,全額寄付により行われたものであり,完成に至るまでの経緯と取り組みは,全国的にも類がなく,県民各位の熱意と郷土愛に,今も胸打たれるものがあります。
博物館は今日まで,郷土の自然・歴史・美術・科学の各分野にわたる資料を収集・展示して,県民の学術・文化の振興に一翼をになってまいりました。しかしながら,昨今の科学技術の進展,生活水準の向上がもたらした,より知的な文化意識の高揚は,一方では,郷土に根ざした現館の伝統を尊重しつつも,他方では,世界に開かれた博物館という理念を掲げた,新しい博物館建設を希求することとなりました。
御衆知のように,徳島県では,置県百年の記念事業として,平成2年秋開館を目標に,徳島市八万町向寺山に文化の森総合公園を建設しております。この公園には,図書館・博物館・近代美術館・文書館・21世紀館などの県の中核的な文化施設を一堂に集めており,県の文化創造活動を先導する拠点となることを願うものであります。新構想に基づく県立博物館は,その規模・内容において,県民の御期待に十分応えられるものと信じております。
顧みますと,現館30年の歴史は,県民の御理解に支えられたものであります。ここに30年の歩みをまとめて刊行することは,今後の博物館の活動にとって大きな意義があると考える次第であります。この機会に,博物館に寄せられました関係諸機関と県民各位の御指導御協力に深く感謝申し上げますとともに変わらぬ御愛顧と県民文化の更なる発展を願い,序文といたします。
- 平成 2 年 3 月
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徳島県知事 三 木 申 三
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