第1回例会
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長谷川賢二「博物館と教育をめぐる課題」
博物館と学校教育との関わりが、学校教育側のカリキュラムなどによって一方的に規定されているものであって、博物館の自発的な動機によるものではないのではないかという観点から、博物館と教育との関わりについての諸説を概観。
松下師一「地域博物館ネットワークの構築−市町村立博物館と県立博物館」
松茂町歴史民俗資料館という地域博物館の学芸員活動から生まれてきた問題意識をもとに、博物館ネットワーク(とくに大規模館と小規模館の関係)のあり方について探った。将来にわたる課題として、地方行政や学芸員養成の問題にまで論及。
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第2回例会
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金原祐樹「文書館と博物館の間−資料の収集と活用」
文書館の場合、現在アイデンティティを模索している段階。国立機関は総務庁管轄であり、教育機関からは切り離された機関になっているため、文化の森にあって社会教育機関の一つと位置づけられている徳島県立文書館の方向性がどの辺にあるのかは悩み深い状況にある。そのような「悩み」のなかでの課題を、資料収集、資料の利用を中心に論じ、文書館と博物館の間には、館種を越えた相互関係が必要だという認識を提示した。
魚島純一「博物館施設におけるくん蒸の現状と今後の課題」
1960年代から博物館の現場でガス燻蒸剤として使われてきたエキボン(酸化エチレン・臭化メチルの混合剤)が2005年以降(後5年で)全面的に使用禁止になる。その後の燻蒸については、代替法が検討されているが、方向性が見えない。今後どのような方向性があるのか注意深く探っていく必要がある。
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第3回例会
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吉村智博「博物館における部落問題展示について(試論)」
勤務先の大阪人権博物館での経験から、「地域」をキーワードとした博物館の方向性を考えるもの。部落問題展示について、地域・人と博物館のつながりのなかで、そのあり方を考える必要があることを強調した。
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第4回例会
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佐藤陽一「生物の差別的名称をどうするか―魚類学会シンポジウムから」
日本魚類学会年会におけるシンポジウム「魚の和名を考える−差別的名称をどうするか」(2000年10月9日)の開催意図や議論の内容を紹介。シンポ準備に際して報告者が行った「博物館・水族館等における差別的生物名称の使用に関するアンケート」の集計結果についても紹介。和名の混乱と社会(人権意識)の変化という現状を踏まえて、標準和名の改称も視野に入れて検討しなおすべきであるという提起がなされた。
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第5回例会
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両角芳郎「博物館の学芸組織に関する一考察」
日本における博物館組織の特色を紹介したうえで、大・中規模博物館における学芸組織の形態を(1)分野別、(2)業務別に分類して、それぞれの長短所を指摘した。さらに、学芸員制度や学芸員養成をめぐる現状と課題についても論じた。
松下師一「非民俗系学芸員による民具資料の整理について―松茂町歴史民俗資料館における実践の記録
―」
報告者は文献史学出身の学芸員であるが、1998年から勤務先で民具の整理に取り組んでいる。整理から公開に至るまでの考え方や作業の過程を紹介し、今後検討していくべき課題についても論及した。
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第6回例会
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新 孝一「『図書館の自由』と資料制限」
博物館・文書館における資料公開のあり方とも関連するテーマであった。まず、「図書館の自由」をめぐる議論や「図書館の自由に関する宣言」を紹介し、続いて図書館における「読書の自由」についての認識と問題を論じた。そして、図書館における資料利用制限の事例を、とくに人権に関わるものを中心に紹介するとともに、それにかかわる問題点等を指摘した。
中尾賢一「資料整理・登録の方法−徳島県立博物館の地学資料の場合−」
地学分野については、整理・登録システムの具体的な報告が少ないとして、徳島県立博物館学芸員である報告者の日常的な作業の現状を紹介するとともに、その問題点を明らかにした。
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第7回例会
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郡司早直「展示室の説明―入館者と学芸員の交流―」
博物館の展示室において学芸員が来館者にガイドをすることが、生涯学習の観点から重要であること、学芸員の博物館教育者としての役割の意義などを指摘した。
根津寿夫「博物館の運営形態について」
報告者自身が経験した勤務先の管理形態の転変とそこで実感した問題に起点を置き、国立博物館の独立行政法人化の問題、博物館(とくに公立の)が財団等に管理委託される場合の実状と問題を検討した。運営のあり方を議論することは、究極は博物館の理念を問うことであるとの見解も提示された。
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第8回例会
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鞆谷純一「公共図書館における集会・文化活動について」
報告者は今年3月まで徳島県立図書館に勤務し、現在は県立高校の学校司書を務めている。自身がこれまでに携わった集会・文化事業の経験を起点にし、また、図書館史も踏まえながら、図書館の果たすべき役割、博物館等の類縁機関との関係のあり方を検討した。
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第9回例会
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須藤茂樹「博物館実習と学芸員養成」
報告者が勤務先で開館以来続けている学芸員養成としての博物館実習の経験と、他館学芸員に送付した博物館実習に関するアンケートにより、実習のあり方について検討した。大学の学芸員養成課程の増加に伴う学芸員資格そのもののあり方の問題や、大学外での博物館実習が直接博物館職員の養成に結びつくことが少ないことを指摘しつつ、博物館の理解者を広げるなどの意味で実習の受け入れを拒むことのできない矛盾を指摘した。
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