文化の森の花だより

2000年2月4日


今月は季節外れに咲いた植物を紹介します.

 

■ カワヂシャ

Veronica undulata Wall.

ゴマノハグサ科

 カワヂシャは春の4月から6月に水辺に咲く花です.環境庁が1997年に発表した植物版レッドデータリストには準絶滅危惧(Near Threatened:NT)として掲載されています.準絶滅危惧というのは「存続基盤が脆弱な種」ということで, 生息状況の推移から見て,種の存続への圧迫が強まっていると判断されるものです(環境庁の資料).
 この植物は徳島県では,吉野川流域を中心に広く分布していて,個体数も多く生育しています.博物館前の園瀬川にもオランダガラシ(クレソン)などとともに,川岸に生育しています.普通は春に咲く植物ですが,寒い時期に橋の下に咲いているのをみつけました(2000年2月4日).橋にさえぎられて霜がおりないために植物体がいたまないことが原因と思われいます.同じ橋の下にはハルノノゲシも咲いていました.
 春に咲いたものは,30〜50cmくらいの茎が直立しますが,今回みたものは10cmくらいのほふくした茎から花穂をだしていて,初めはなんの植物かわかりませんでした.
 霜があたる川岸には,セリやヨモギが芽をだしていました.コハコベやウシハコベがぽつりぽつりと咲いていて,オオイヌノフグリも一つだけ花が開いていました.タネツケバナの花はちょうど見ごろで,ナズナは花が終わりかけでした.
 近くの田のあぜではカンサイタンポポも咲いていました.
 寒い風が吹く河原にも春の息吹が感じられました.

2000年2月4日

徳島県徳島市八万町向寺山園瀬川で撮影

カワヂシャ メモ:カヂシャはカワジサやカワジシャと表記されることがあります.カワヂシャのなかまには,オオカワヂシャのように帰化植物といって外国から入ってきたものがあります.徳島のカワヂシャについては,個体数が多く,生育場所が3面貼りのコンクリートの用水路にも生え,帰化植物的な性質がありますので,ある人に見ていただきましたが,帰化植物ではなく在来のカワヂシャであるとのことでした.


 

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