アルゼンチン産
ナルトサワギクの標本
ナルトサワギクは,1976年日本で初めて徳島県鳴門市の埋立地に帰化してるのが発見されたキク科の植物です。サワギクのなかまだったので,発見地にちなんでその名が付きました.外国からやってきた帰化植物(外来種)でしたが,いったいどこの国から来たのか,なにものなのかわからないまま20年間もたっていました.
1996年に私が当館の標本庫(収蔵庫)で標本を調べていた時にナルトサワギクそっくりの標本を見つけました.この標本はアルゼンチン産で,1993年開催の企画展「南アメリカの自然」のためにアルゼンチンから入手したものでした.この標本ラベルには,Senecio madagascariensis Poir.と学名が書かれていました.これを契機に,さまざまな人の協力を経て,ナルトサワギクが南アフリカのマダガスカル原産の植物であると判明しました.学名がわかるとインターネットや文献などで次々に情報が集まりだし,この植物がいったいどのようなものなのかがわかりはじめました.この植物を食べると家畜の成長を阻害するために,オーストラリアやハワイなどで大がかりな駆除が行われていることも明らかになりました.
環境省は外来種対策のために法律を制定し,有害なものをこれ以上広がらないようにしていますが,その対象種としてナルトサワギクが指定されました.これもナルトサワギクの正体が判明し,その影響がわかってきたからです.これはその契機となった貴重な標本です.
トップへ
|