概要
徳島県勝浦町から発見された国内最古級の竜脚類恐竜の化石
平成28年7月3日(日)、徳島県勝浦町の前期白亜紀(約1億3000万年前)の地層から、国内最古級となる竜脚類(恐竜)の歯化石が発見されました。竜脚類は、長い首と尾をもち、大きなもので30メートルを超える植物食の恐竜のグループで、竜脚類の化石の発見は、四国で初めてとなります。
発見者は、徳島県阿南市在住の化石愛好家の田上浩久さんと田上竜熙さん(中学2年生14才)の親子です。福井県立恐竜博物館と徳島県立博物館の標本鑑定の結果、国内最古級に相当する竜脚類ティタノサウルス形類であることが判明しました。今後、徳島県立博物館と福井県立恐竜博物館が、より詳しい調査研究を合同で進める予定です。
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徳島県勝浦町で発見された竜脚類ティタノサウルス形類の歯の化石 (スケールの白黒の間隔:1cm) (画像提供:徳島県立博物館) |
発見のポイント
・竜脚類の化石の発見は、四国で初めてです。
・竜脚類ティタノサウルス形類としては、国内最古級(約1億3000万年前)です。
発見場所と発見された地層
徳島県勝浦町には、前期白亜紀(約1億3000万年〜約1億年前)の地層が分布しています。この地層の一部は、湖や河川または、汽水域(淡水と海水が混ざる干潟のような環境)でできた地層で、その周辺に生きていた淡水生の貝やシダ・裸子植物などの化石が発見されており、1994年には植物食恐竜のイグアノドン類の歯の化石も発見されました。今回の竜脚類ティタノサウルス形類の歯化石も、勝浦町に分布する前期白亜紀の地層に含まれていました。 竜脚類の歯の化石が発見された勝浦町の位置と白亜紀の地層の分布 (画像提供:徳島県立博物館) |
竜脚類ティタノサウルス形類について
竜脚類は、長い首と尾をもち、大きなもので30メートルを超える植物食の恐竜のグループです。アパトサウルスやブラキオサウルスなどが有名です。巨大な竜脚類は、ジュラ紀に繁栄しましたが、ジュラ紀と白亜紀の境界付近で数が減り、白亜紀の竜脚類はティタノサウルス形類と呼ばれるグループが主流となります。福井県勝山市からは、全長約10メートルと推定される竜脚類ティタノサウルス形類のフクイティタンが発見されています。今回勝浦町から発見されたティタノサウルス形類もフクイティタンの歯とサイズが変わらないことから、全長10メートル前後と推定されます。
竜脚類ティタノサウルス形類の生体復元画 (画像提供:山本 匠) |
アルゼンチン産のティタノサウルス類の一種の全身骨格標本(複製) (標本は、徳島県立博物館常設展示室で展示))(画像提供:徳島県立博物館) |
発見の意義
日本の恐竜化石の産出地の多くは、中央構造線の北側に集中しています。中央構造線は、西南日本の地質を南北に分断する断層帯です。地質的に中央構造線より北側を内帯(ないたい)と呼び、南側を外帯(がいたい)と呼びます恐竜が生きていた中生代は、日本海は存在せず、日本列島はアジア大陸の東縁にありました。中央構造線より北側の内帯は、アジア大陸に近いため、陸地で堆積した地層(陸成層)が多く分布しています。陸域で生息していた恐竜は、陸成層で見つかるのが一般的です。内帯に含まれる福井県をはじめとする北陸地域から恐竜化石が多く発見されるのは、そのためです。
一方、中央構造線より南側(太平洋側)にある外帯は、海で堆積した地層(海成層)が多く、陸成層が少ないのが特徴です。そのため、外帯からの恐竜化石の産出は稀です。西南日本外帯から知られている恐竜化石は、群馬県、三重県、和歌山県、徳島県の4県のみです。そのうち、竜脚類の化石は、群馬県、三重県、徳島県で発見されています。今回、勝浦町で発見された竜脚類の化石は、三重県で発見されている恐竜とほぼ同時代の国内最古級のものと言えます。
また、中央構造線は、白亜紀当時から活発に断層運動をしており、外帯は、現在の位置よりも数百キロ以上、南方にあったと推定されています。徳島県勝浦町産の恐竜化石は、国内で見つかる恐竜の中でも南方に生息していた恐竜の生物相を知る上で重要と言えます。
約1億3000万年前の日本列島 (画像提供:徳島県立博物館) ※図は、平 朝彦(1990)岩波新書「日本列島の誕生」の掲載図に加筆 |
今後の研究について
徳島県勝浦町産の竜脚類の歯の化石は、今後、当館と福井県立恐竜博物館が、合同で調査研究を進める予定です。調査研究の結果は、学会発表または、報告書・論文として今後発表する予定です。展示について
日時:平成28年8月10日(水)から平成28年9月25日(日)まで場所:徳島県立博物館2階 常設展示室内にて展示
(※8月31日まで「家族でおでかけ・節電キャンペーン」で常設展示室を無料でご覧になれます。)