展 示

 博物館での展示は、常設展と企画展から成る。
 常設展は、徳島の自然、歴史、文化、自然のしくみ等が概観でき、また、全国的・世界的なかかわりについても理解できるよう、いろいろなテーマを定めて展示している。部分的な展示替えや資料の入れ替えは随時行っているが、基本的な展示の構成は開館以来変わっていない。しかし、開館14周年が過ぎ、常設展の更新(リニューアル)が大きな課題となっているが、財政的には非常にきびしく分割案や構造的なものをあまり変えない更新なども検討中である。いずれにしても常設展の更新はできるだけ早期に実現したいと考えている。
 企画展は、専用の企画展示室を使って年3〜4回行うことにしている。各分野・分類群の館蔵コレクションの紹介、学芸員の研究成果に基づく地域自然誌や歴史・文化の紹介、全国的あるいは世界的な広がりの資料の展示など様々なテーマをおりまぜ、数年先までのスケジュールをたてて計画的に取り組んでいる。
 しかしながら、予算の削減も行われ、開催回数を減らし、館蔵資料による特別陳列の回数を増やすことも考えなくてはならなくなりつつある。

 

1.常設展

(1)常設展の構成

 博物館の常設展示は、総合展示、部門展示およびラプラタ記念ホールの展示の3つから構成されている。

●総合展示
 「徳島の自然と歴史」を総合テーマとし、徳島の歴史と文化、現在の自然の姿が概観できるよう、次の7つの大テーマにそって展示が展開されている。
 1.日本列島と四国のおいたち
 2.狩人たちの足跡
 3.ムラからクニへ
 4.古代・中世の阿波
 5.藩政のもとで
 6.近代の徳島
 7.徳島の自然とくらし

●部門展示
 総合展示とはちがった角度から、分野ごとの個別的、分類的な展示を行っている。
 人文:焼物のうつりかわり/阿波の美術工芸/徳島の歴史・民俗資料 など
 自然:いろいろな岩石/鉱物/いろいろな動物/生物の生活と自然のしくみ など

●ラプラタ記念ホールの展示
 アルゼンチン共和国のラプラタ大学から寄贈された南アメリカ特有の更新世哺乳動物化石を展示している。
 主な展示資料:
  メガテリウム全身骨格(レプリカ)
  パノクツス全身骨格及び甲羅
  マクラウケニア全身骨格(レプリカ)
  トクソドン全身骨格(レプリカ)
  スミロドン全身骨格(レプリカ)
  ヒッピディオン全身骨格(レプリカ)
  ステゴマストドン頭骨(レプリカ)

(2)部門展示の展示替え
 部門展示(人文)では、テーマを決めて随時展示替えをしている。平成16年度は次の展示を行った。

●復元青銅器
 前年度〜4月18日(日)
 復元鋳造された青銅器を展示し、つくられた当時の青銅器のすがたを紹介した。あわせて、銅鐸の復元鋳造を例に、当時の鋳造技術についても紹介した。
●大名行列の世界
 4月20日(火)〜6月6日(日)
 参勤交代や異国船警備などの行列について紹介した。
●なつかしいモノたち
 6月8日(火)〜10月3日(日)
 近年ではあまり見かけなくなった昭和30〜40年代の生活道具を展示した。
●阿波の祭り―神馬の馬具と装飾―
 10月5日(火)〜12月5日(日)
 当館に寄託されている阿南市新野町轟神社祭礼の神馬に関する資料を中心に、現在ではほとんど見ることがなくなった、馬の出る祭りについて紹介した。
●徳島水平社創立80周年記念 部落解放のあゆみ
 12月7日(火)〜2月6日(日)
 徳島県の近代における部落解放運動の展開について紹介した。
●島のくらし―伊島・出羽島―
 12月7日(火)〜4月17日(日)
 伊島・出羽島のくらしを民具と写真により紹介した。
●谷田蒔絵−はなやかな草花のデザイン−
 2月8日(火)〜4月17日(日)
 徳島独特の漆器である谷田蒔絵を、館蔵品によって紹介した。 

(3)トピック展示
 未公開資料の活用を中心として、常設展に変化をつけるため、ラプラタ記念ホール出口に展示ケースを設置して小展示を行っている。平成16年度は次の展示を行った。

●牟岐大島の自然とくらし
 前年度〜4月4日(日)
 平成14〜15年度課題調査の成果を展示した。
●平成15年度新規購入資料紹介〜民俗編〜
 4月6日(火)〜6月7日(日)
 平成15年度に購入した資料の一部を紹介した。
●旅をするチョウ─アサギマダラ─
 6月9日(火)〜10月24日(日)
 アサギマダラの移動についての調査成果を紹介した。
●キクの博物誌
 10月26日(火)〜12月5日(日)
 キクの生物としての側面、生活のなかのデザインとしての側面などについて紹介した。
●森のツキノワグマ
 12月7日(火)〜4月3日(日)
 ツキノワグマの生態について紹介した。展示した。

2.企画展

 平成16年度は、次の3回の企画展を行った。

(1)第1回企画展「サメの世界」
 この企画展ではサメやエイ類について、形態の多様性・面白さを中心に、進化の道筋や生活様式などについて剥製や模型、化石などを通じて紹介した。

●会期 平成16年4月24日(土)〜5月30日(日) (33日間)
●会場 博物館企画展示室
●展示構成と主な展示資料

[1]巨大化石ザメ:ムカシオオホオジロザメの復元顎(神奈川県立生命の星・地球博物館蔵)
[2]サメの分類学:ピラルクー剥製(当館蔵)ほか
[3]サメの解剖学:コロザメ脊柱(神奈川県立生命の星・地球博物館蔵)ほか
[4]サメの生態学:ミツクリザメ顎、アオザメ顎(神奈川県立生命の星・地球博物館蔵)ほか
[5]ジョーズの正体:映画ジョーズポスター(当館蔵)、ホオジロザメ、イタチザメ、アカシュモクザメ頭部剥製([有]東洋近代美術研究所蔵)ほか
[6]サメの進化:レバノン産板鰓類化石(当館蔵)ほか
[7]サメの紳士録:ジンベエザメ、ホオジロザメ、イトマキエイほか剥製([有]東洋近代美術研究所蔵)
[8]サメの利用:フカヒレ、ワサビおろし、健康食品ほか

●展示資料点数 合計約120点
●観覧料 一般200円/高校・大学生100円/小・中学生50円
●期間中の観覧者数 16,704人
●企画展解説(14:00〜14:30)
 第1回:4月25日(日) 参加者 72人
 第2回:5月9日(日) 参加者 67人

 

(2)第2回企画展「エビとカニ」
 エビ、カニ、ヤドカリ類を含む甲殻類は動物の中では昆虫、軟体動物に次ぐ大きなグループである。また、食べものということもあって一般にはなじみ深い。しかしながら、その生態や分類の多様性の高さについては一般にはあまり知られてはいないのが実状である。
 この企画展ではこの知られざる甲殻類の世界を、徳島産の主な甲殻類、世界の多様な甲殻類、カニの形をしたヤドカリ、交尾様式などについて、剥製や飼育展示により様々な角度から紹介した。また、参加型展示として観覧者に展示物の絵を描いていただいて、それを展示するコーナーを設けた。

●期間 平成16年8月12日〜9月20日(月)
●会場 博物館企画展示室
●展示構成
[1]甲殻類の生態等に関するトピックス
 ・魚の死体に群がるベニズワイガニ
 ・椰子の木に登るヤシガニ
 ・摩周湖の幻の巨大ザリガニ
 ・いろいろな甲殻類
 ・カニに似たヤドカリ
 ・泳ぐカニ:ガザミ類
 ・毒のあるカニ
 ・タカアシガニの交尾
 ・ズワイガニの配偶行動
 ・エビ・カニの生殖器
[2]徳島の甲殻類
 ・牟岐沖産甲殻類剥製
 ・徳島近海産甲殻類剥製
 ・淡水産甲殻類飼育展示
 ・干潟のカニ
 ・エビ・カニ漁法
[3]世界の甲殻類
 ・分類別剥製展示
 ・タカアシガニ簡易ジオラマ
[4]エビ・カニの絵をかこう

●展示資料点数 合計約約470点
●観覧料 一般200円/高校・大学生100円/小・中学生50円
●期間中の観覧者数 11,965人
●企画展関連行事
[1]展示解説(各日とも14:00〜15:00)
 第1回:8月15日(日) 参加者13人
 第2回:8月22日(日) 参加者11人
 第3回:8月29日(日) 参加者15人
[2]人形劇「カニのきもち」
 日時:8月12日(木)〜15(日)及び29日(日)、各日とも13:30〜及び15:00の2回上演
 上演:よしのがわひがたファンクラブ
 会場:博物館企画展示室
 参加者:延べ約550人

 

(3)第3回企画展「石とくらし」
 この企画展では、県内での事例を中心に、古代から現代まで生活のいろいろな所で使われる「石」と人間生活との関わりについて紹介した.

●期間 平成16年10月22日(金)〜11月28日(日)(33日間)
●会場 博物館企画展示室
●展示構成主な展示資料
[1]いろいろな石
[2]古代のアクセサリー
[3]石と祈り
[4]くらしの道具
[5]鉱石
[6]石材

●主な展示資料
  縄文時代のひすいの大珠(大ぶりの飾り玉)
  徳島県産鉱石および関連資料
  国会議事堂に使われた徳島県産石材および関連資料

●展示資料点数 160件1140点
●観覧料 一般200円/高校・大学生100円/小・中学生50円
●期間中の観覧者数 4,141人
●企画展関連行事
[1]徳島市中心部の地質と石材見学 10月3日 13:00〜16:00 参加者16人
[2]火打ち石・石器使用実演 11月3日 企画展示室内 参加者256名
[3]勾玉をつくろうA 11月14日 13:00〜16:00 参加者47人
[4]展示解説
   第1回: 国会議事堂の石材 10月24日 13:00〜14:30 参加者16名
   第2回: 石造物 10月31日 13:00〜14:30 参加者17名
   第3回: 交易品としての石材 11月21日 13:00〜14:30 参加者6名

 

3.特別陳列

(1)収蔵品展―人文コレクション―
 考古・歴史・民俗・美術工芸の人文系4分野にわたり収集、収蔵された多くの未公開資料の中から、とくに歴史的に重要な資料、話題性に富む資料を取り上げて展示した。

●主催 徳島県立博物館
●期間 平成16年6月18日(金)〜7月19日(日)
●会場 博物館企画展示室
●主な展示資料
<考古分野>
 石臼(若杉山遺跡出土)
< 歴史分野>
 菅生家文書(徳島県指定文化財)、太龍寺文書、日露戦争関係資料ほか
< 民俗分野>
 屋台、浄瑠璃人形、箪笥、長持、風呂、経理用具(銭枡、算盤)、屋号印、重箱、三ツ盃、明治期花火 関係資料ほか
< 美術工芸分野>
 波蒔絵鞍(飯塚桃葉作・個人蔵)、鶏蒔絵印籠(飯塚桃葉作)、竹花入 銘旅衣(伝小掘遠州作)、守 家画稿類(守住貫魚・勇魚・周漁ほか)、月に芋図(鈴木其一筆)ほか

●観覧料 無料
●観覧者数 5,703人
●展示解説
   第1回:6月20日(日) 参加者35人
   第2回:7月18日(日) 参加者20人

 

(2)2004年度文化の森人権問題啓発展
 文化の森5館と徳島県教育委員会(生涯学習課・人権教育課)との共催で、年2回の人権問題啓発展(同和問題啓発標語ポスター入選作品展と識字学級生の作品展)を行った。

●主催 文化の森5館・徳島県教育委員会
●期間・入場者
 [1]2004年度文化の森同和問題啓発標語ポスター・資料展
    平成16年8月7日(土)〜8月15日(日)
    入場者数 1,568人

 [2]2004年度文化の森人権問題啓発展
    平成16年12月7日(火)〜12日(日)
    入場者数  753人

●会場 2回とも近代美術館ギャラリー・21世紀館多目的活動室・ミニシアター(ビデオ上映)
●入場者数計  2,321人 

 

4.企画展示室の会場提供

(1)第28回全国高等学校総合文化祭徳島大会
 第28回全国高等学校総合文化祭(高文祭)徳島大会が平成16年7月30日〜8月3日の会期で開催され、文化の森(博物館、美術館、21世紀館)が美術・工芸部門の展示会場となった。
 博物館では、作品搬入から搬出までを含め、7月26日〜8月4日の間、企画展示室を会場として提供した。
 期間を通じて延べ2,508人の入場者があった。 

(2)第27回ひまわり作品展
 県立養護学校・盲学校・聾学校、小・中学校障害児学級の児童・生徒の作品展である「ひまわり作品展」は、これまで郷土文化会館を会場として開催されてきた。しかし、16年度は一般障害者のイベント「第8回ぽいんせちあフェスティバル」と同時に文化の森で開催されることになり(会期:12月17日〜19日)、12月15日〜19日の間、博物館企画展室を会場として提供した。
 期間を通じて延べ3,221人の入場者があった。

  

5.館外での展示

(1)展示パッケージの貸し出し
 県内博物館の支援及び収蔵資料の展示機会の増加を図るため、展示パッケージ(テーマに応じた展示資料及びパネル、ラベルのセット)の貸し出しを始めた。
 今年度は、植物以外の各分野から1〜2テーマずつを挙げてリスト化し、徳島県博物館協議会加盟館等に配布した。その結果、問い合わせが数件あり、実際の貸し出しは1件あった。貸し出し内容は次のとおり(パッケージ名称、貸出先、期間の順に表記)。 

 ・なつかしいモノたち 徳島県立あすたむらんど 平成17.1.12〜2.21

 

(2)移動展
 平成14年度に海南町立博物館において移動展「昆虫の世界」を開催したが、以後、同様の機会はなかった。前項の展示パッケージ貸し出しを始めたのにあわせ、パッケージをそのまま利用できない場合でも、開催館からの要望があれば、当館で展示内容を構成し、移動展として開催するよう考えていくことにした。結果として、藍住町歴史館 藍の館において、当館では2回目の移動展を開催した。 

■移動展「日本画書展―江戸から昭和まで―」
●主催 藍住町歴史館 藍の館・徳島県立博物館
●期間 平成16年12月2日(木)〜12月27日  (月)
●会場  藍住町歴史館 藍の館新館会議室
●展示品 
 渡辺広輝筆「養老の滝図」、狩野祐勢筆「阿波鳴門図」、柴野碧海一行書、川合玉堂筆「寒汀帰漁図」、橋本関雪筆「富嶽扇面」その他。博物館蔵品計17点。
●入場者数 898人 

 

6.常設展の更新及び活性化に向けての取り組み

(1)常設展更新に向けての取り組み
 当館では、開館10周年をめどに常設展の全面更新を実現したいと考え、開館5年目にあたる平成7年度から館内での検討を行ってきたが、事業化は実現しなかった(年報7号参照)。その後、開館15周年目に当たる17年度にリニューアル・オープンする計画で、事業規模を縮小した基本案見直しを行い、予算積算などを行ったが、厳しい財政状況等もあって、依然として事業化は認められていない。
 今後、できるだけ早い時期での常設展更新が実現するよう、その方途を探っている。16年度に開催した企画展「石とくらし」では、次期常設展の考え方を部分的に実現しようとした。
 また、最近開館した博物館や展示のリニューアルを行った館に対する調査も継続してきており、15年度には次の調査を行った。

 ・国立科学博物館新館:新設館の展示状況の調査

 

(2)常設展の活性化に向けての取り組み
 常設展の全面更新が困難な状況にあることから、現行常設展の手直しなどを進め、より利用しやすく、また、より変化の見えるかたちへと変えていくよう取り組んでいる。16年度は、次のようなことを行った。

[1]部門展示(人文)の計画的運営と広報
 年度当初に年間展示替え計画を明確にし、案内チラシを配布して広報に努めた。

[2]展示の改善
 ・総合展示の改善
  展示室内閲覧用解説シートを設置(日本列島と四国のおいたち)したほか、新着資料の展示(古代・中世の阿波)、パネルの追加(徳島の自然とくらし)なども進めた。
 ・博物館のバックヤードと展示がつながっていることを示すとともに、学芸員に親しみをもってもらえるよう、学芸員の似顔絵入りパネルを掲示した。

[3]展示解説の促進
・受付案内員による展示解説
 夏季より受付案内員による定時展示解説を始め、16年度中に48回行った。現在は日曜日とクイズラリーのない土曜日の午後に30分程度で実施している。これ以外の日には、要望があれば随時対応することにしている。
・“びっくり箱”を使った解説
 昨年度に引き続き、実演用ワゴン(“びっくり箱”)を使用した展示解説を5回実施した。

 

7.展示関係出版物

■企画展図録・解説書

 ●第2回企画展解説書「エビとカニ」
 2004年8月12日発行、A4判8ページ(カラー)、700部+友の会増刷分200部
 ●第3回企画展図録「石とくらし」
 2004年10月22日発行、A4判31ページ(カラー)、700部+友の会増刷分300部

 なお、第1回企画展「サメの世界」では解説書は、作成せず、4ページ(カラー)のリーフレットを作成して観覧者に無料配布した。


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