オカダイコン

Adenostemma madurense DC. (キク科)

小川・田渕(2006)を改変 

 徳島県植物誌にはヌマダイコンの産地として川島町 山田,山城町 大歩危,鷲敷町 百合・小仁宇,牟岐町 中村,出羽島,海南町 皆瀬が記録されている.湿った場所に比較的多い植物である,
 ヌマダイコン(A. lavenia (L.) Kuntze)としてまとめられていたものに2型あり,その一部がオカダイコンとして分けられていると,2005年11月の四国植物研究会で小林史郎氏より教えていただいた.この時開催された野外観察会でオカダイコンを見ることができ,関連する文献(Koyama,2001; 小林,2004)も入手できたのでその実体がわかった.
 Koyama(2001)によると,ヌマダイコンは湿った場所に,オカダイコンはやや乾いた場所に生育する.ヌマダイコンの果実は瘡蓋様のもので覆われるが,オカダイコンは平滑である.さらに,京都大学や国立科学博物館などの標本庫の調査により,四国では高知県産のオカダイコンの標本が見つかっている(Koyama, 2001).
 ヌマダイコンは変異が大きく,その分類にはかねてから疑問があったので,県内の標本を再検討したところ,ヌマダイコンと同定されていた海南町産の標本は果実が平滑であるという特徴がオカダイコンと一致したので,県内初記録として報告する(図2).この種の果実は通常は総苞に覆われており,その特徴を精査するためには果実が成熟した標本を解剖する必要がある.今回は比較的簡単に果実の形態が判別できた海南町産のみをオカダイコンとしたが,県内でも他の産地が見つかる可能性があり,生育環境とあわせてよく果実の稔った個体を調査する必要がある.

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図.オカダイコンの標本とオカダイコン・ヌマダイコンの果実.A:海南町産オカダイコンの標本(TKPM-BSP015690,バーは5cm).B:果実の比較(バーは3mm).左:オカダイコン(TKPM-BSP015690),右:ヌマダイコン(TKPM-BSP205021,徳島県麻植郡川島町産).

証拠標本:徳島県海部郡海南町平井.1953年10月23日,日出武敏採集.標本番号 TKPM-BSP015690

文献

阿部近一.1990.徳島県植物誌.380p.教育出版センター,徳島.
小林史郎.2004.オカダイコンとヌマダイコン.高知県植物誌調査ニュースレター,no.11:2.
Koyama H. 2001. Adenostemma lavenia and itsallies (Compositae) in Japan, China, and Thailand. Mem. Natn. Sci. Mus. Tokyo, no. 37:159-168
小川 誠,田渕武樹.2006.徳島県産植物ノート(2)ー徳島県新産4種ー.徳島県立博物館研究報告,no16:115-120.



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