花の散歩道

[過去の花の散歩道]

2004年8月17日

私の目にとまった植物を紹介します.


クロアザミ

Centaurea nigra Linn.

キク科

 先日,博物館友の会の会員である篠原さんご一家が訪れて花の名前を教えて欲しいと依頼されました.広島におられる知り合いからもらったもので,産地は不明とのことです.
 一見したところキク科で花はアザミに似ていますのでアザミ属やトウヒレン属,タムラソウ属などのあたりと見当を付け,簡単に名前がわかるかと思いました.しかし,葉の形などでは該当するものが見あたりませんでしたので,許可をいただいて標本の頭花を解剖しました.
 まず,平凡社の「日本の野生植物 草本編III」のキク科の検索表を用いて,検索しましたが該当するものがありませんでした.
 というのは,アザミ属やトウヒレン属,タムラソウ属などの痩果(そうか)には冠毛(かんもう)がありますが,これには冠毛がなかったのです.解剖する前に毛のようなものが見えましたが,花床から生えたものでした.痩果には柔らかい毛が生えていました.

クロアザミ


 日本の植物ではないと思いましたので,平凡社の「日本の帰化植物」で調べたところ,ヤグルマソウ属のクロアザミということがわかりました.アザミのなかま(アザミ属)ではありませんでした.
 この植物はヨーロッパ原産の植物でしばしば栽培され,それが逃げだし,日本では1970年代に帰化が確認されました.原産地のヨーロッパではヤグルマソウ属が500種もあり,たいへん多くの種が分布しています.ヨーロッパの植物誌の本である「Flora Europaea」によると,クロアザミは3亜種からなっています.
 この植物は総苞(そうほう)が特徴的ですので,一度見れば忘れないでしょう.

 

クロアザミの頭花

クロアザミの頭花

 

クロアザミの総苞

クロアザミの総苞

 


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