オミナエシ
-普通の植物だったのに-
オミナエシの花(2001年8月29日,佐那河内村)
先日の台風がすぎてから,急速に日差しが柔らかくなり,秋のにおいがしてきました.そんな中,まだ8月というのに「秋の七草」の一つであるオミナエシが佐那河内村の道ばたに黄色の花をつけていました.鮮やかな花なので車を停めておもわずシャッターを切ってしまいました.
オミナエシは「秋の七草」としてなじみの深い植物で,昔はかなりありましたが,最近では少なくなってきています.同じく「秋の七草」には,ハギ,ススキ,キキョウ,フジバカマ,ナデシコ,クズがあります.キキョウとフジバカマは絶滅に瀕している生きものを集めた環境庁のレッドデーターブックに載っており,珍しい植物になっています.オミナエシはそれらに比べるとまだまだ多く見られますが,それでも昔より少なくなっているのは事実です.
オミナエシやキキョウ,フジバカマが少なくなっているのは,花が美しいので鑑賞や栽培用として採取されるのもありますが,一番の原因は,生育に適した日当たりの良い草地が無くなってきたためです.
昔は私たちの周りには,田のあぜやため池・川の土手,山の斜面などに日当たりの良い草地がたくさんありました.現在でもそうした場所はないわけではありませんが,その多くがコンクリートに固められたり,外国産の草が植えられたりしています.また,昔は茅場(かやば)といって,ススキなどの植物を,茅葺き屋根や家畜の飼料などに使っていましたが,現在ではそうした利用が無くなり,草地がなくなりました.そのために多くの植物が暮らす場所を失って減ってきています.やっかいなのは,そうした草地を維持するためには,そうしても人力などのコストが必要です.昔は,身の回りの自然を利用するために,そうした草地が維持されてきたのです.しかし,生活や生産のスタイルが変わってしまった現在では,そうした草地の維持のためのコストを生み出すのはなかなか困難です.オミナエシの花を見るたびに,自然を守るということの難しさを感じてしまいます.
大阪市立自然史博物館でそうした絶滅危惧生物を集めた展覧会「レッドデータ生物
−失われゆく自然と生きもの−(2001年8月4日〜9月24日まで)」が開催されています.ぜひ,見にいってください.
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