草や木でどんな紙が作れるの?

 

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 紙の材料となる繊維(パルプ)は植物の中にたくさん含まれています.紙作り(紙すき)においては,できるだけばらばらになった繊維を取り出すのが良い紙を作るポイントとなります.繊維を取り出すためには

  1. 熱を加える
  2. アルカリ性の薬品で処理する
  3. 機械的にばらにする(たたく)
  4. 腐らせる

などのやりかたがあります.取り出した繊維の質によって,どんな紙ができるのか変わってきます.

 

サトイモの葉柄と葉を水酸化ナトリウム水溶液で煮て作った紙

サトイモの葉柄と葉を灰汁で煮て作った紙

 上の2枚はサトイモの葉を柄ごと紙にしたものです.2つの違いは,煮る際に使った液で,左は水酸化ナトリウムで右は灰汁です.灰汁の方は繊維が完全にばらばらになっていないのがわかります.灰汁で似て良い繊維を取り出すためには,煮た繊維をよくたたいて細かくすることが必要です.

 もっと詳しくサトイモの紙を見る

 

イヌビワの皮を水酸化ナトリウム水溶液で煮た後,漂白して作った紙

イヌビワの皮を灰汁で煮て作った紙(無漂白)

 

 上の2枚はイヌビワの皮を紙にしたものです.左は水酸化ナトリウムで煮てばらばらにした繊維を,漂白剤で一晩処理したものです.右は,灰汁で煮て,皮を木槌でたたいて繊維をバラバラにして,紙にしたものです.どちらがきれいな紙かは一目瞭然ですね.
 しかし,灰汁で煮ても,もっと細かくなるまでたたいてやり,水に長期間さらして色を落としてやれば,目の細かくきれいな紙をつくることが可能です.


 強い薬品を使い繊維をばらばらにし,強力な漂白剤を使えばできれいな紙を簡単に作ることができます.しかし,それは,人に対しても優しくないし,廃液の処理で水を汚すことにつながります.
 この紙作りの目的は,良質の紙を作ることではなく,紙を作る課程で,いろいろなことを考えてもらうことです.工夫次第では手間と時間を掛けてやることによって,強力な薬品処理を行ったのに近い良い紙ができます.

実際にできた紙


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