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ナカガワノギクは那賀川でも阿南市持井より那賀町長安口ダムまでの限られた範囲にしかない。この菊が生える場所は、川のそばの岩場で、そこは大雨が降ると水に浸かる場所だ。こうした場所は渓流帯と呼ばれ、そこに生える植物は渓流沿い植物と呼ばれる。渓流沿い植物には葉が流線型になるという特徴がある。そうした場所はいったん増水すると、 川岸は濁流に浸かり、それが数日も続く。できるだけ水の抵抗を少なくして、増水がおさまるのを待つために、渓流沿い植物の葉は流線型をしているのだろう。ナカガワノギクも他の菊に比べて、葉が細くなっていて、渓流沿い植物の特徴を持っている。 |
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ナカガワノギク(右)とノジギク(左)の葉 |
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日本の野生菊の仲間には、渓流帯に生えるものは他には無い。海岸の斜面や崖などの日当たりの良い場所に生えるものがほとんどだ。ナカガワノギクは、そうした日当たりの良い斜面に生えるリュウノウギクによく似ているので、リュウノウギクと共通の祖先を持ったものが渓流帯に適応して生まれたものと考えられている。那賀川流域は県下でも雨量の多い場所なのので、そうした暴れ川である那賀川の自然がナガカワノギクを生み出したとも言える。 |
ナカガワノギクは那賀町鷲敷付近でシマカンギクと雑種を作り、それはワジキギクと呼ばれている。そして下流では、雑種が交雑をくり返し、山麓や田のあぜなどに様々な型のものが生えている。ナガカワノギクの面白さは、いったん川岸に特化して分化したものが、シマカンギクと雑種を作り、その遺伝子を取り込みながら、ふたたび、川岸より離れて広がっていったことだ。 [那賀川の植物観察] [小川誠のトップページ] [博物館のトップページ] このページに関するお問い合わせは作成者:小川 誠(徳島県立博物館)へ |