ナルトサワギク

Senecio madagascariensis Poiret

キク科

2000年8月9日より 最終更新日:2005年11月2日

ナルトサワギク
 

ナルトサワギクの紹介ビデオができました。
ナルトサワギクの分布情報を集めています.
ご存じでしたら小川 誠(徳島県立博物館)へメールください.

■分布情報

ボタニックガーデン」を開設されている末広さまから,下記の情報をいただきました(2004.2.9).
2004年2月8日に淡路島の灘黒岩水仙郷へ行く途中で、見たことのないキク科の花をみつけました。ちょうど淡路島南ICから県道25号線を走って、南淡町の福良丙仁尾)付近の道沿いです。この時期に咲く、キオン属なんて知りませんので、調べてみると「ナルトサワギク」でした。
このときの写真は、わたしのホームページに掲載してあります。

小川コメント:淡路島のナルトサワギクについては,横山(1989)が1984年に兵庫県三原郡西淡町阿那賀丸山のゴルフ場で記録しており,早い時期から定着していたものと思われます.末広さまがおっしゃられるように冬でも花を着け,種子を飛ばすのが,この植物の旺盛な繁殖力の秘密のひとつでしょう.

 


野に咲く四季の草花たち」のホームページを開設しておられるnakayoshiさまから,下記の情報をいただきました(2002.2.14).
ナルトサワギクの花は、泉州地区や和歌山紀北地区ではよく見られる花です。
それでも、ここ数年でもの凄い勢いで繁殖しているように思います。場所は、和歌山県那賀郡岩出町の根来寺の西側に位置します。この場所には一年ほど前に見られ始め、数ヶ月でビックリするほどに広がり、群生状態となりました。どうも、道路工事や団地の造成地などで、他の植物が根付く前に広がっているように思います。

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小川コメント:大阪の南部を中心に広がっていると噂には聞いていましたが,想像以上のすごい群生です.

  


阪南市の石川 剛さまから下記の情報をいただきました(2002.2.1).
2002年1月29日 大阪府阪南市光陽台のテニスコート傍の谷間の道端 50株以上が開花して群生.
2002年2月3日  阪南市桑畑の第二阪和国道造成工事中断箇所(約250mの長さ)約200株以上.
2002年2月5日  阪南市貝掛の住宅造成地など 約50株.
2002年2月5日  阪南市スカイタウン住宅地 1kmほど歩いて200株程度見つけた.住宅地の広さから、数千株がここに生えていると思われる.この住宅地において生垣の装飾に使われており,阪南市の新興住宅地では珍しい花では無く、ポピュラーな花となっているようである. 
2002年2月7日 和歌山県那賀郡那賀町の町立『青州の里」のハーブ園で約30株.

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小川コメント:花がきれいなので,やはり植える人が出てきています.困ったものです.

                                       


               

いわわきネイチャークラブの上田さまから下記の情報をいただきました(2001.11.6).
1999年に、槇尾山南側、東槇尾川沿いの林道で1箇所10株以上が群生
     (和泉市槇尾山町)
2000年に、岩湧山北側の林道滝畑岩湧寺線で1箇所数株
     (河内長野市加賀田)
2001年に、岩湧山南側の林道千石谷線で5箇所5株ほど
     (河内長野市滝畑)
 


●高知新聞 2000年5月23日の記事
 http://www.kochinews.co.jp/000523he.htm

 


ナルトサワギクとは?

 ナルトサワギクは1976年に鳴門市瀬戸町で見つかった帰化植物です.埋め立て地の緑化の種子に混じって広がったものですが,花の特徴からサワギク属の一種であることがわかりましたので,ナルトサワギクと名付けられました.しかし,サワギク属は世界で2000種を越えるといわれており,その学名はわからないままになっていました.学名がわからないと、この植物がもともとどこに生えていて、どんな植物で、どのように広がっているのかといった正体を調べることができません。
 その後、ナルトサワギクの学名が幾度か発表されましたが、どれも確証に欠けていました。ところが、1996年に、徳島県立博物館に収蔵されていたアルゼンチン産の標本の中にナルトサワギクと同じものが見いだされました。そのラベルには Senesio. madagascariensis Poiret という学名が書かれていました。また、徳島県植物研究会の会長である木下覚氏が、アメリカのスミソニアン博物館にナルトサワギクの標本を送り同定を依頼していたところ、1997年に同博物館の Harold Robinson 博士からその結果が戻ってきて、それも S. madagascariensis と同定されていました。さらに、同博物館に滞在中の富山市科学文化センターの太田道人氏により、多くの情報が寄せられました。こうして、発見から20年以上たって、ナルトサワギクの学名が S. madagascariensis ということが明らかとなり、インターネットなどを通じてその情報が集まるようになりました。
 毎年、たくさんの生き物が外国から入ってきますが、その正体をさぐるのはとても難しいことなのです。


ナルトサワギクは害草?

 

 インターネットで収集した情報によるとナルトサワギクは馬や牛などの家畜が食べると中毒を起こすことがわかっています.特にオーストラリアでは,牧草地に侵入したナルトサワギクを駆除するために200万ドル以上の資金が投入されているといいます.

 徳島県でも,ここ数年間に急速に,ナルトサワギクの分布が広がりつつあり,吉野川沿いや沖洲の埋め立て地など広範囲に分布するようになりました.牧場や採草地への侵入は注意する必要があるでしょう.

●オーストラリアの資料
 http://www.dnr.qld.gov.au/fact_sheets/pdf_files/pp31.pdf
 Senecio madagascariensis の詳しい情報が記載されている.
●ハワイの資料
 http://www.hear.org/AlienSpeciesInHawaii/flyers/SenMad_M_flyer.pdf
 オーストラリアで200万ドル以上の資金が投入されていることがかかれている.
 http://www2.ctahr.hawaii.edu/oc/freepubs/pdf/WC-2.pdf
 


【文献】

木下覚・小山博滋・小川誠・太田道人 .1999.帰化植物ナルトサワギクの学名.植物分類・地理,50(2):243-246.
横山雅一.1986. コウベギク Cenecio paludosus について.兵庫生物,9(2):63-64

 


ナルトサワギクはどんな形をしているの? 

ナルトサワギクの花

花期の終わり

つぼみ

吉野川河口の砂州に入り込んだナルトサワギク
ナルトサワギク
2000年5月11日 徳島県石井町東覚円吉野川で撮影

ナルトサワギクの形をもっと詳しく見たい場合は下記をクリック

[全体]
[茎の上部] 
[つぼみ]
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ナルトサワギクはどんな分布をしているの? 

ナルトサワギクの分布(アフリカ以外は帰化したもの)
木下ら(1999)に基づき作成

 

ナルトサワギクの分布情報のある都道府県

※かならずしも標本を確認していない.

 

 


 

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このページに関するお問い合わせは作成者:小川 誠(徳島県立博物館)