シマキケマンの分布の謎

シマキケマン

ケシ科 

Corydalis tashiroi Makino

シマキケマン

シマキケマン(日和佐町)

 

 シマキケマンは海岸に生育するケシ科の越年草です.キケマンに良く似ていますが,花の色が黄緑色を帯び,種子の表面に凹点が有ることで見分けることができます.
 分布は九州〜琉球と言われていましたが,1993年に植物研究家の田渕武樹氏によって,徳島県海部郡日和佐町の海岸で生育していることが発見されました.博物館の標本を調べてみると,さらに20年以上も前の1971年にも同じ場所に生育していたことがわかりました.良く似ているので気が付かなかったのでしょう.今のところ県内ではこの1カ所でしか見つかっていない貴重な植物です.
 日和佐町の生育地は入り江になった海岸近くの砂礫地で,人や鳥が運んだとは考えにくい状況です.高知県からの記録は見つかっておらず,何故,九州からかけ離れた徳島県の海岸に生えているのかは謎です.キケマン属の種子にはエライオソームが着いており,アリが種子を運ぶと言われている.シマキケマンの種子は小さく,水に浮かぶような特殊な構造を持っていないので,種子単体で長期間海流にのって流されてきたとは考えにくく,果実か種子が何かのものと一緒に海流にのって運ばれてきたものと思われます.

追記:四国での分布状況がわからなかったのですが,愛媛県のレッドデータブックに掲載されていました.それによると保内町(記録)・三崎町となっています.高知県ではレッドデータブックに掲載されていませんし,分布するという情報は得られていません.

【参考文献】

愛媛県貴重野生動植物検討委員会編.2003 愛媛県のレッドデータブック−愛媛県の絶滅のおそれのある野生生物−.愛媛県県民環境部環境局自然保護課.

石垣島の珊瑚礁に生育するシマキケマン

 

シマキケマン(日和佐町)

 

シマキケマンの果実

シマキケマンの果実

 

キケマン

キケマン

 

キケマンの種子

キケマンの種子.種子の表面に突起がある.白い部分はアリが好むエライオソーム.

 

キケマンとシマキケマンの種子の比較

シマキケマンとキケマンの種子の電子顕微鏡写真.A,B:シマキケマン.C,D:キケマン.A,C:全形.B,D:表面の拡大.スケールバーはA,Cでは500μm,B,Dでは20μm.


このページに関するお問い合わせは作成者:小川 誠(徳島県立博物館)

 

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