徳島の植物ノート

歯抜け型分布をする植物

ある地域の生物を調べていると,隣の地域の生物が気になるものです.徳島だと,お隣の和歌山県や高知県の植物が気になります.和歌山県や高知県にあって徳島県にない植物というのが案外たくさんあって,それを歯抜け型分布と仮に呼びます.植物の分布には県といった行政区画は関係ありませんので,高知県を中心とした四国南部と,和歌山県や奈良県などの紀伊半島には分布しているが,徳島県を中心とした四国東部には分布していないものを(徳島)歯抜け型分布と呼びましょう.

 

ツルソバ

室戸岬にいけばたくさんありますが,徳島県ではお目にかかれない植物.隣の和歌山県にも分布していますが,なぜか徳島県にはありません.阿南市で生育地が見つかったとの情報を受け確認に行ったところ,栽培の逸脱でした.

 

キオン

高知県の西の方には分布しており,高知県でも少ない植物で高知県版レッドデータブックには掲載されています.徳島県には見あたりません.

 

シソバウリクサ

南の方に多い植物で,紀伊半島,四国南部,奄美に分布し,高知県版レッドデータブックでは高知県東洋町に記録があるとされています.徳島県の宍喰町で過去に標本が採られていますが,誤認でしたので,県内では見つかっていません.

 

トサムラサキ

本州(和歌山県,広島県),四国南西部,九州に分布する植物です.高知県には分布し,隣の和歌山県にあるのであってもおかしくはない植物です.徳島県植物誌には記録が有りますが,残念ながら標本等の確認できる情報はありません.

その後、海陽町で発見されました。

 

ビロードムラサキ

本州(和歌山県),四国,九州に分布する植物です.高知県東洋町に分布していますので県内にあってもおかしくない植物です.

その後、海陽町で発見されました。

 

イワダレソウ

南に多い植物で,紀伊半島と高知県には分布しています.徳島県でも鳴門市で過去に記録されていますが,標本は残っておらず現在ではわかりません.

他にもイワガネ、ヤブレガサモドキ、トサオトギリなどが相当します。

これらの植物は,単に見つかっていないだけかもしれませんし,もともと分布が少なく滅びてしまったものもあるのかもしれません.

 


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