プリンターの退色比較


テストの目的

植物標本のラベルにはドットプリンタが良いと言われているが,ラベルに利用できるプリンタは何かを試した.ラベルの条件としては,インクの退色が無いというのが最も重要である.


テストの方法

印字方式の違う各種プリンター(3機種)と,紙(3種類)でそれぞれ同じものを2部づつ印刷する.9通りの組み合わせが2セットできる.
プリンタ
CANON LBP B403D(レーザプリンタ),HP DeskWriter C(顔料系インクジェットプリンタ),NECPR201G(ドットプリンタ)
用紙:コクヨコピー用紙,ゼロックスコピー用紙(中性紙),三菱(中性紙)
1セットは外光の入らない蛍光灯のみの証明の部屋の壁に貼り露光した.残りの1セットは茶色の封筒に入れ,めったに開けない机の引き出しに入れ遮光し保存した.
露光(遮光)期間:1992年1月25日〜1999年3月18日


結果(1999年3月18日)

各用紙による退色の差はほとんど無かったので,コクヨコピー用紙を例に取り,下に各プリンタの退色の違いを示す.
写真がわるくてごめんなさい.上部の黒い帯はKODAKのグレースケールなので比較の基準にしてください.

 

CANON LBP B403D(レーザプリンタ)
露光(上)と遮光(下)で見た目にはほとんど差なし

 

HP DeskWriter C(顔料系インクジェットプリンタ)
露光(上)と遮光(下)で見た目にはほとんど差なし

 

NECPR201G(ドットプリンタ)
露光(上)は青みがかって薄くなっている.遮光(下)とは見た目であきらかに違いがわかる.


植物標本のラベルにはどのプリンタが良いか?

上記の結果だけで各種プリンタに関する評価を下すのは危険ではあるが,いろいろなプリンタを利用してきた経験や集めた情報から,それぞれのプリンタについての私見を述べてみる.

 

■レーザプリンタ
 退色がほとんど見られないが,基本的にはコピーと同じである.コピーやレーザプリンタは熱でトナーを溶かし,紙に接着するもので,印刷の際の熱の加わりかたが少ないと,手でこすっただけでトナーがとれてしまう実際,CANON LBP B403Dでは厚手のタックシール用紙を使用したときに,トナーがこすれてとれてしまう現象を経験した.この機種はレーザプリンタとしては比較的初期に作られたモデルなので,現在では改良されているだろうが,レーザプリンタの場合は用紙の選択も重要なポイントである.

 

■インクジェットプリンタ
 インクジェットプリンタにはインクの種類でいくつかにわけることができる.最近広く利用されているインクジェットプリンタは水性インクのものが多く,耐光性の面では劣ると思われる.HPやNECが顔料系のインクジェットプリンタを販売しているが,退色の面からは優れていると思われる.しかし,HPやNECが採用しているプリンタの構造は用紙がプリンタの中で1回転するようになっており,葉書の半分くらいのラベル用紙だと,紙詰まりや用紙サイズが足りなくて印刷できない場合が発生する.小さい用紙が印刷できる,顔料系のインクジェットはないものであろうか.

 

■ドットプリンタ
 植物標本ラベルとして良いとされるドットプリンタはかなりの退色が見られた.テストには純正のドットプリンタ用のインクリボンを用いたが,このタイプのものはリボンが輪になっており繰り返して使用できるようになっているため,使用回数によって退色性が変化することが推測できる.そこで,未使用のインクリボンと複数回使用したインクリボンで比較したところ,未使用のものと数回使用したものでは退色性に顕著な差が現れた.保存性を高めるならできるだけ使用回数の少ない新しいものをつかうべきであろう.また,印字ヘッドの摩耗にも注意を払うべきである.
 魚類の液浸標本ではインクリボンをカーボンに変えて印刷しており,これだと退色の問題がクリアできるであろう.

 


このページに関するお問い合わせは作成者:小川 誠(徳島県立博物館)

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