ヤマザトタンポポ

Taraxacum arakii Kitam.

 丹波・丹後・但馬で活躍した植物研究家、荒木英一が兵庫県豊岡市出石町東床尾山で採集した標本に基づく。やや大きい頭花で、花の色はカンサイタンポポに比べて淡くレモン色である。総苞外片は総苞の1/2以上の長さでやや細長い。総苞外片のへりは時に赤くなり、辺毛も多い。総苞外片の先端には角状突起はほとんどない。Morita (1995)はクシバタンポポ(後述)と同種としているが、明らかな別種である(芹沢2006)。
 明瞭な角状突起をもつものはケンサキタンポポとされるが、芹沢(2006)は同種として扱っている。今後の分類学的研究が必要だが、本報告書ではヤマザトタンポポとケンサキタンポポを区別するかしないかは各府県実行委員会に任せた。ケンサキタンポポを区別して報告したのは、滋賀・鳥取・島根の3府県である。ここでの分布図は、ヤマザトタンポポとケンサキタンポポをまとめた広義のヤマザトタンポポの分布を示している。
 北陸から山陰にかけての範囲に広く分布しており、岡山県北部・広島県東部にもある程度の分布がある。今回の報告では、四国西部にもヤマザトタンポポの分布を示した。山本(1978)はヤマザトタンポポを愛媛県産として報告しているが、今回の調査では四国西部にも分布するツクシタンポポとの区別に十分な検討ができず、ほとんどの場合ではヤマザトタンポポと同定している。
 しかしながら、四国西部での黄花倍数体タンポポの産地はかなり明らかになってきており、小泉(1936)が記載したイヨタンポポおよび後述するツクシタンポポも含めて、遺伝情報に基づく解析が必要である。

※ケンサキタンポポ Taraxacum ceratolopis Kitam.

 京都府綾部市上杉を基準産地としており、前述のヤマザトタンポポとの差異は明瞭な角状突起の有無である。芹沢(2006)はヤマザトタンポポとケンサキタンポポにはっきりとした差はなく、ケンサキタンポポはヤマザトタンポポに含む見解を示している。
 筆者※※の観察するところでは3月末あたりの開花初期では角状突起がなくヤマザトタンポポとすべき個体で、5月初めには明瞭な角状突起があってケンサキタンポポと同定すべき頭花を付けていることがあり、芹沢の見解を支持したい。しかしながら開花初期から明瞭に角状突起のある個体があるのも事実であり、形態のみでの同定は困難である。
 京都府・兵庫県にもケンサキタンポポと判断される頭花もあるが、両府県実行委員会で区別しなかった。福井県・広島県にもおそらく分布するであろう。

※※ 兵庫県立人と自然の博物館 鈴木 武

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