植物園のような生きた植物を展示するスペースを持たない博物館では,どのように植物を展示するか,ひじょうに悩みます.ここでは,いかに来館者に植物を楽しんでいただくかを考えながら試行錯誤した記録として,植物の展示方法の試みを紹介します.
まず,植物の展示方法ごとに,その特徴を見てみましょう.
1.実物(生きた状態)
植物そのものを鉢植えにして生きた状態で見せることができれば,展示としては最も良い方法でしょう.ただ,花を見せたい場合は,開花時間などの調整や管理などメンテナンスのコストがかかります.
2.実物(押し葉標本)
夏休みにつくったことがあるかもしれませんが,植物を乾燥させた押し葉(花)標本を展示に利用することがあります.作成は簡単で,費用も安くつきメンテナンスは楽ですが,平面的なことと,色が実物と違ったり退色しやすいという問題点があります.
3.実物(種子や樹幹標本,その他)
種子や樹幹標本はそのままで展示することができます.最近では,樹脂包埋標本などが利用される場合がありますが,作成のテクニックによりできふてきああります.また,キノコなどでフリーズドライの手法を用いて実物に近い形で保存するやりかたもあります.
4.レプリカ・模型
植物から型を取り,それを元に樹脂などで整形したものがレプリカです.実物と同じ大きさでそっくりに作りますので,精密に作られたレプリカは生きているように見えます.右のヒガンバナのレプリカを野外に持っていって本物の中に植えておいても見分けが付かないでしょう.よく,来館者からレプリカの植物について「水やりはどうするのですか?」と聞かれますが,「作り物ですので,水をやる必要はありません」というやりとりをします.模型はレプリカよりも精度を落としているか,拡大や縮小などしているものを言います.私のところでは小さな種子の拡大模型を作って展示しています.レプリカや模型はメンテナンスの手間がかからず,本物そっくりなので展示効果としては高いけれども,高価でたくさん用いることはできません.
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