植物観察ノート

Mitrastemon yamamotoi Makino


ヤッコソウイラスト

ヤッコソウ

徳島県が分布の北限

写真

 徳島県の南にはヤッコソウという変わった植物が生育してる。どう変わっているかというと、種子を作る植物は緑色の葉を持っていて光合成をして必要な養分を自分で作るのが普通である。ところが、このヤッコソウは十センチメートルにも満たず、全体が白く緑色の葉を持っていない。自分では養分を作ることができず、別の植物にくっ付いて養分をもらっている。そうした植物を寄生植物という。
 ヤッコソウはその寄生植物のひとつで、シイノキ属の植物の根に寄生する。秋に 「やっこ 」に似た白い花を付けるのでこの名が付いた。徳島県が自生の北限で、国や県の天然記念物に指定されている。

ヤッコソウの分布


ヤッコソウの帽子の秘密


 ヤッコソウには帽子がある。その帽子は、雄しべが筒状になったものだ。帽子の側面には花粉がつまった葯が帯のようになった葯帯がある。花ははじめは雄しべの帽子をかぶっているが、やがてそれが抜け落ち、雌しべが顔を出す。花には甘い蜜がたくさん出ていて、花の下側にある鱗片葉の付け根に蜜がたまる構造になっている。その蜜を求めてやってきた小動物や虫が、たまった蜜をなめようとして頭を入れると雄しべの帽子に触れて花粉が付く。そして別の花に移って同じように蜜をなめようとするとむき出しになった雌しべに体が触れて受粉する。

ヤッコソウからだのつくり(左)とおしべの帽子をかぶったヤッコソウ(右)

赤い色の部分が筒状になったおしべ

ヤッコソウの開花

ヤッコソウの花の咲き方

 

 寄生植物は変わった形をしたものが多く、世界で一番大きな花を付ける植物であるラフレシアもその一つで、一見、葉は全く見られずに一メートルを超える奇妙な花を付ける。中心には壷のようになった場所があり、その奥に雄しべや雌しべがあって臭いで呼び寄せられたハエが花粉を運ぶ。寄生植物は栄養を作るための葉を付ける必要がないので、子孫を残すための花にエネルギーを集中することができる。そこで、花粉を運んでもらうために効率の良い形になっていて、普通の植物とは変わった形をしている。


 

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このページに関するお問い合わせは作成者:小川 誠(徳島県立博物館)