速報

2002年秋のアサギマダラの移動に関する徳島県のようす

大原 賢二

 

 鹿児島県で初めてアサギマダラの移動調査が行われたのは1980年でした.翌年鹿児島から福島県への移動記録が出たことによって,このチョウの移動調査が全国規模で行われるまでになりました.徳島県でも調査を始めて相当の時間がたちましたが,2000年にやっと初めての移動記録が出ました.この年は10件ほどの移動記録が出たのですが,さらに2001年秋には福島県や長野県白馬村や美ヶ原,石川県輪島市などから徳島県へ移動してきた個体が記録されました.また徳島県から高知県室戸岬をはじめ,愛媛県西部や鹿児島県薩摩半島最南端への移動が確認され,南西諸島への移動記録はでませんでしたが,これらの記録から四国を通って九州東岸へたどり着き,そこから南下していくコースがあることが示唆される記録となりました.

 アサギマダラの秋の移動に関しては,徳島県は四国の入口として存在していると考えられ,どのような地域からどこへやってくるかを知ることは,アサギマダラの移動ルートを考えるときに非常に重要なことです.そのために徳島県東岸の鳴門市,徳島市,阿南市,由岐町などでの調査を重点的におこなってきましたが,2000年と2001年の記録から,淡路島を経由して鳴門市へはいるコースと,和歌山県の日ノ岬付近から阿南市伊島,蒲生田岬付近を目指すコースがあることが強く示唆されています.もちろん全ての個体がこのようなコースをとるわけではなく,素通り組や別な場所から四国へ渡って来るものは相当な数であろうと思われます.

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 今年(2002年)も秋の南下の時期に,蒲生田岬の近くにあり,これまで多くの移動記録が得られている由岐町明神山を中心に本州からの移動個体確認のための調査が行われました.

 今年は対岸の和歌山県側では昨年に比べ,非常に多くの個体にマークできているにもかかわらず,徳島県側に渡ってきている個体数はきわめて少ないようです.明神山でマークできた個体は昨年に比べおよそ半分という状態です.理由はわかりませんが,今年は四国全体にそういう傾向ではないかと思われ,高知県で最も多くのアサギマダラが集まると思われる室戸市室戸岬周辺でもいつもの年に比べて,非常に少ないようです.

 海部郡由岐町明神山でアサギマダラの調査を継続していただいているのは,阿南市の神野清司氏,大角京子さん,撫中義美さん・喜代美さんご夫妻,それに由岐町阿部小学校の出口光先生と生徒さん方です.さらに今年は徳島市の岩佐晴男さん・和子さんご夫妻がほぼ毎日明神山まで行ってくださっています.岩佐さんご夫妻は,朝早く明神山を調査し,少ない場合には蒲生田岬まで行かれ,再度明神山に戻って午後からの調査をしてくださったりして,明神山での日ごとの個体数の動きがよくわかるデータが得られていますが,今年はどうにもアサギマダラの姿が少ないようです.徳島市内の眉山では,徳島市の中島真典氏,玉置房さんなどが活躍してくださっています.

 アサギマダラの個体数が少ないことがそのまま再確認個体の少ないことにつながるわけではないでしょうが,今年徳島県で再確認された個体は5個体しかなく,やはり昨年に比べて少ない状態です.以下に簡単に今年の記録をご紹介しておきます.

1. 和歌山県西山から由岐町明神山

歌山県西山から由岐町明神山へ移動した個体(STU214) 和歌山県の津野修一さんのマーク個体

2. 和歌山県西山から由岐町明神山

和歌山県西山から由岐町明神山へ移動した個体(AN231) 和歌山県の乾風 登さんのマーク個体

3.  明神山で再確認されたが標識地不明の個体

 標識 KA05(左後翅裏面だけにマーク)の個体:出発地不明

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4 大阪府高槻市から徳島市眉山

 残念ながら写真はありませんが,大阪府高槻市で標識を付けられた個体が,徳島市眉山山頂付近で確認されています.

現在までのところ,2002年はこれだけの再確認記録しか出ていません.

また,今年はたくさんの方が徳島県でマークしてくださったのですが,残念ながら他の県へ移動した記録は1つも出ませんでした.高知県の室戸岬などでも確認されておらず,今年のアサギマダラは一体どこへ行ったのだろうと不思議な気がしています.でも長い歴史の中でこのようなことはくり返し起こったことでしょうから,また来年の春からこのチョウの移動調査を再開したいと思います.

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