2001年6月に徳島市でクロメンガタスズメAcherontia lachesis (Fabricius, 1798)を採集したので報告する.
クロメンガタスズメ:1♂,徳島市上八万町上中筋,4. June, 2001,大原賢二採集 (ZIN-12549).
本種はインドから東南アジアにかけて広く分布するスズメガの一種で,日本では,以前は琉球列島だけから知られていた(井上ほか, 1982).しかしその後,鹿児島県本土でも採集されるようになり,分布を北に広げつつある種のひとつとして注目されている(福田, 1997; 山下,1998など).
四国では1991年,高知県土佐清水市で採集されたのが初記録とされており(中山,1992),その後1996年に愛媛県喜多郡長浜町でも記録された(中山,1997).さらに2000年には高知市や南国市,土佐市,幡多郡佐賀町,高岡郡東津野村,吾川郡春野町などで成虫や幼虫が発見されている(別府,2001).しかし,これらの地域で継続的に発生しているかどうかは不明である.
幼虫はゴマ,ナス,トマト,バレイショ,タバコ,アサガオ,チョウセンアサガオ,キリ,フジマメ,デイゴ,アサ,サツマイモ,アサガオ,ノウゼンカズラ,ツルギク,クサギ,デュランタなどを食害することが知られている(山下, 1998;別府,2001;林,2001など).
徳島県においては,本種の正式な記録はないが2000年10月10日に石井町の県病害虫防除所で発見されたことが新聞で報じられており(朝日新聞,2000年10月12日付朝刊),今回のものが徳島県での2例目の記録になる.
採集場所は神社で,社殿の庇の下に静止していた.近くにニホンミツバチの巣の出入り口があり,盛んにハチが出入りしていた.クロメンガタスズメが夜間にミツバチの巣から蜜を盗むという記録がある(西, 1999)ので,この個体もニホンミツバチの巣に誘引されたのかもしれない.
また秋には徳島市上八万町西山で,トマトを食害していた本種の幼虫を発見し,飼育したが蛹化直前に死亡し,成虫は得られなかった.また,付近ではナスにもついていたようであり,夏から秋にかけて徳島市内に広く分布していた可能性もある.
(引用文献)