牟岐町の盆棚

［事例一］牟岐町橘字喜来（情報提供者：昭和九年生　女性／檀那寺　真光寺　曹洞宗）

１ 先祖

・表の間の軒下につるす木製の作り置きの棚でまつる。

・「ショウロダナ」という。

・表の間の軒下に木製の作り置きの棚をつるす。棚の一番奥に、十三仏の掛軸をつるす。棚の内部上方にメダケを渡し、ナスビ、素麺、フロウマメ、オクラをつるして供える。仏壇から位牌を出してきて、棚の中に並べる。位牌の前に果物、お茶、お霊具、ダンゴを置いて供える。棚の左手に根引きのサトイモ、右手にミズハギとシキミを付ける。

　棚の下方には、台を置き、果物、菓子、野菜などの供物と水につけたミズハギの枝を置く。その前に経机、香炉、線香立て、ろうそく立て、りんを置く（写真一、二）。

　棚をつるしてまつる間、室内の仏壇の内部に、棚と同様にメダケを渡し、ナスビ、素麺、フロウマメ、オクラをつるして供える（写真三）。

・一三日の夕方、棚をつるす。一四日の朝、屋敷の門口に、メダケの先にマツをカンナで削ったものを束にしてつけたタイマツを立て、火をつけて迎え火とする。その後、仏壇から位牌を棚に移して供物をし、墓参りに行く。一四日に棚にお茶を二一回供える。これは、般若心経の中に「南無」という字が二一回含まれているからだと聞いている。一五日の夕方か一六日の朝に棚を片付ける。屋敷の門口にタイマツを立てて火を焚き、送り火とする。棚に供えたものは一六日の朝、川に流すとしていた。これで送ったということになる。送るために墓参りには行かない。

・かつては、盆の期間中、檀那寺の僧が回ってきて、「ショウロダナ」の前で経をあげてくれた。

２　新仏

・床の間に新仏の位牌を写してまつる。

・「床の間」。

・仏壇のようにメダケを渡し、つるして供物をすることはない。

・近年は、新仏のある家には、彼岸の時期に檀那寺の住職が家に来て仏壇の前で経をあげてくれるようになっている。

３　無縁仏

　「ムエンボトケさん」という言葉は聞いたことがある。この家の墓地にはムエンボトケをまつっている所はないので、盆に墓参りに行った時には、自分の家の墓だけ参る。

（写真一　ショウロダナの様子）

（写真二　ショウロダナの上部）

（写真三　仏壇の様子）