<平成16年2月6日改訂>

 

徳島県立博物館の資料収集方針



 博物館とは,博物館法によれば,「資料」を収集・保管し,展示などの事業において教育的配慮のもとに人々の利用に供すとともに,資料に関する調査研究をする機関である.すなわち,資料の収集保存は博物館活動の根幹をなす事業と位置づけられ,調査研究,展覧及び普及教育などの諸事業は,これに依存しているといえる.
 徳島県立博物館は,地域博物館として県域に根ざした資料の収集を大きな柱としている.徳島県産の動植物や鉱物・岩石・化石,徳島県にゆかりのある考古,歴史,民俗,美術工芸の資料など,各分野においてあらゆるものを,できる限り網羅的に収集することが当館の使命である.それと同時に,これらの資料のもつ様々な価値を見いだし,適切に評価するためには,比較資料の存在が欠かせない.そのため必要に応じて四国他県,日本国内,国外の比較資料も併せて収集することが重要となる.比較資料はまた,調査研究に必要というだけでなく,教育的配慮のもとに展示等を構成するうえでも有効なものである.
 県立博物館の建設に当たっては,昭和59年(1984)から開館する平成2年(1990)までの間,徳島県立博物館基本構想検討委員会の答申に基づき徳島県立博物館資料収集展示委員会が設置され,収蔵する資料と展示のあり方の検討が行われた.県立博物館では,そこで示された収集基本方針(表1)を基に,当面の目標として分野ごとに次のような収集方針に基づき資料の収集を行う.ただし,この収集方針はあくまでも重点的な目標であり,それら以外の資料を収集しないということではない.個々の資料について収集するかしないかの判断は,様々な条件を勘案しつつ適宜なされるものである.


表1.徳島県立博物館収集基本方針
  1. 徳島の自然と人文に関する資料のすべてを収集の対象とする.
  2. 地域に根ざしたテーマを設定し,計画的かつ集中的な収集をする.
  3. 徳島の概要あるいは特性を把握するため,世界を対象とした比較資料の収集をめざす.
  4. 一次資料のみならずすべての二次資料をも収集する.


(1)動物分野
ア. 徳島県に生息する脊椎動物,無脊椎動物及び昆虫について,可能な限り広範囲かつ網羅的に収集し,地域ごと(例えば市町村レベル)の動物相を把握できる程度のコレクションの構築をめざす.
イ. 徳島県産標本との比較のため,必要に応じて国内及び国外産の比較標本も収集する.国内産については四国他県のものを,また,国外産については東アジアや東南アジア産のものを中心に収集する.
ウ. 脊椎動物のうち,鳥類と哺乳類については剥製標本だけでなく,骨格標本もできる限り収集する.
エ. 国や県などによる環境調査で得られた調査標本を積極的に受け入れる.
オ. 分類学的研究や動物地理学的研究に関する文献,その他調査研究に必要な文献を収集する.
カ. 学校等への貸出や普及行事,展示等に利用できる資料を充実させる.

(2)植物分野
ア. 徳島県の植物相を記録するため,県内に生育する植物を網羅的に収集する.特に分類学的に問題のある分類群については,重複標本を含めて重点的に収集する.
イ. 徳島県の植物相の比較資料とするため,日本国内はもとより必要に応じて世界各地の標本を収集するとともに,国内外のハーバリウムと標本の交換を積極的に行う.
ウ. 植物相に関する各種調査・研究の証拠標本を収集する.
エ. 県産植物に関するものを中心に,植物の分類及び分布に関する文献資料を広く収集する.
オ. 植物の生態写真の撮影・収集に努める.
カ. 学校等への貸出や普及行事,展示等に利用できる資料を充実させる.

(3)地学分野
ア. 徳島県産の主要な岩石,鉱物,化石(特に大型化石)は網羅的に収集する.
イ. 近隣地域から産する岩石,鉱物,化石についても可能な限り収集する.
ウ. 化石及び岩石は,日本産の代表的な標本,外国の有名な標本,日本や世界の地史を理解するのに役立つ標本を中心に収集する.
エ. 鉱物は,主に産状のわかる標本,典型的な色や結晶形態のものを収集する.
オ. 地形,地質及び古生物に関する文献資料を収集する.
カ. 学校等への貸出や普及行事,展示等に利用できる資料を充実させる.

(4)考古分野
ア. 次の各号に該当するものを中心として,徳島県内出土資料を網羅的に収集する.
  1)古墳を中心として,墓制変遷の系統的理解に必要な資料
  2)辰砂採掘遺跡出土資料をはじめとして,生産に関連する資料
  3)銅鐸をはじめとする青銅器及びその製作技法に関する資料
  4)古代寺院及び古代の役所に関する資料
  5)古代・中世・近世の焼き物
イ. 実物資料の収集が困難な場合は,複製品等の二次資料も積極的に収集する.
ウ. 必要に応じて,県外の比較資料や文献を含む参考資料も収集対象とする.

(5)歴史分野
ア.次の各号に該当するものを中心として,徳島県に関する古代〜近・現代史関係
  資料を網羅的に収集する.
  1)中世史関係資料(古文書,金石資料等)
  2)民衆生活史関係資料
  3)徳島藩政史及び蜂須賀家に関係する資料
  4)戦争関係資料
  5)先人関係資料
イ.アに関連する資料であれば,必要に応じて県外の比較資料や参考資料も収集対
  象とする.
ウ. 写本,複製品,拓本,写真等の二次資料も収集対象とする.

(6)民俗分野
ア. 地域性あるいは変遷の過程を示す,生活全般に関する資料を収集する.
イ. 近現代社会において,劇的に生活の変化をもたらした資料,明確な流行を示した資料を収集する.
ウ. 阿波人形浄瑠璃に関する資料(人形頭・衣装・浄瑠璃本・小道具・その他)を収集する.
エ. 藍及び染織に関係する道具や製品を収集する.
オ. 生活全般に関する風俗,慣習を映像等に収録する.
カ. 県内にある民具に関しては,現品の所在情報を収集する.
キ. 貸出用,普及行事用,展示用資料として,使用可能な,生活全般に関する資料及びその複製品などを収集する.

(7)美術工芸分野
ア. 作者,流派,題材,制作事情,所有者等において,近世以前の徳島にゆかりのある絵画作品とその関係資料を収集する.
イ. 作者,技法,材質,意匠,産地,制作事情,使用者等において,近世以前の徳島にゆかりのある漆工品,金工品,染織品,陶磁器と,それらの関係資料を収集する.
ウ. 作者,流派,題材,制作事情,所在等において,近世以前の徳島にゆかりのある彫刻品とその関係資料を収集する.
エ. 蜂須賀家または家臣の旧蔵品,及びそれらの家が制作に関与した美術品を収集する.
オ. 近世以前における徳島の美術史を解明するうえで,重要な意味をもつ美術品とその関係資料を収集する.


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