1 日本列島と四国のおいたち
私たちが生活している四国,そして日本列島は,どのようにして形づくられたのだろうか.近年のさまざまな岩石や化石の研究によって,古生代(こせいだい)末から中生代(ちゅうせいだい)にかけての日本列島の土台の形成,第三紀中新世(ちゅうしんせい)の日本海の誕生といった壮大なドラマが,かなり克明(こくめい)に描き出されてきた.ここでは,プレートテクトニクスの考えにもとづき,時代を追いながら,そのおいたちをたどっていくことにしよう.
・生命のおいたち |
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生命のおいたち 地球は,今から約46億年前に生まれた.それから約10億年たって,原始の海で生命が生まれ,長い時間かかって,より複雑な体のつくりをもつ生物へと進化していった.
先カンブリア代の生物 世界最古の化石は,約30億年前の地層から見つかるバクテリアやラン藻(そう)などの原核(げんかく)生物の化石である.それから10億年たって,緑藻(りょくそう)類などの真核(しんかく)生物が生まれた.
古生代の生物 古生代になると,海にすむ無脊椎(むせきつい)動物が飛躍的に増え,三葉虫(さんようちゅう),筆石(ふでいし),腕足(わんそく)類,床板(しょうばん)サンゴ,オウムガイ,紡錘虫(ぼうすいちゅう)などが栄えた.それらは,先カンブリア代の生物とちがい,キチン質や石灰質のかたい殻をもっていた. ■三葉虫のなかま ■古生代の植物
太古の日本 古生代の中ごろ,地球の南半球にはゴンドワナとよばれる巨大な大陸があり,それを大海洋がとりまいていた.アジア大陸はまだなく,大海洋にうかぶいくつかの地塊(ちかい)に分かれていた.
日本列島の地帯構造 日本列島の土台は,いろいろな時代の地層や岩石が帯状によせ集められてできている.
日本最古の化石 長いあいだ,シルル紀やデボン紀の床板(しようばん)サンゴや腕足(わんそく)類の化石が,日本最古の化石だと考えられてきたが,1980年以降,それより古いオルドビス紀の貝形虫(かいけいちゅう)や放散虫(ほうさんちゅう)などの微化石も発見されるようになった.
青石はかたる 秩父帯(ちちぶたい)の岩石をはじめ,日本列島の土台の大部分は,古生代末から中生代中ごろまでにつくられた付加体(ふかたい)からできている.そこでは,おもにジュラ紀の砂岩・泥岩の中に,海洋プレートにのって運ばれてきた,より古い年代をしめす緑色岩(りょくしょくがん)やチャート,石灰岩などが,大小のブロックとなってはさみ込まれている.
青石と緑色岩 緑色岩(りょくしょくがん)類は,もともとは,海底火山活動によって噴出した玄武岩(げんぶがん)質の溶岩や凝灰岩である.それらは南の海で多数の火山島や海山をつくっていたが,ペルム紀からジュラ紀にかけて,つぎつぎと大陸側に付加された.
大陸の分裂と移動 中生代になると,超大陸パンゲアの分裂と移動がはじまり,大西洋やインド洋,北極海が新しく生まれた.このことは,海域の分化や気候帯の変化をもたらし,海だけでなく,陸上にすむ生物にも大きな影響をあたえた.
四万十帯の成長 白亜紀(はくあき)になると,堆積盆の中心はしだいに北から南へ移り,秩父帯(ちちぶたい)のさらに外側に付加体(ふかたい)がつくられた.ここでの付加作用は第三紀中新世(ちゅうしんせい)のはじめまでつづき,こうして,四万十帯(しまんとたい)がつくられた.
和泉層群の化石 和泉層群は,中央構造線の活動によって生まれた堆積盆をうめた,礫岩(れきがん)・砂岩・泥岩の厚い地層からできている.そして,東西300km以上にわたって細長く分布している.
勝浦盆地の地層と化石 勝浦川流域から羽ノ浦町にかけて,秩父帯(ちちぶたい)の中・古生層を不整合におおって,白亜紀(はくあき)前〜後期の地層が分布している.
四万十帯 四国の四万十帯(しまんとたい)は,安芸(あき)構造線を境にして,北半部は白亜紀(はくあき),南半部は古第三紀の地層からできている.砂岩・泥岩を主体とし,チャートや凝灰岩などをともなう地層で,放散虫(ほうさんちゅう)などの微化石を除けば,アンモナイトや貝などの大型化石はほとんど含まれていない. ●宍喰の漣痕 [複製]
恐竜とアンモナイトの時代 古生代末に絶滅したり衰退(すいたい)した生物にかわって,中生代になると,多くの新しい生物が発展した.陸上では裸子(らし)植物が生い茂り,爬虫(はちゅう)類,とくに恐竜類が全盛をきわめた.いっぽう,海の中ではアンモナイト類が大繁栄した.
アンモナイトの進化 アンモナイト類は,古生代デボン紀から中生代白亜紀(はくあき)末にかけて栄えた軟体動物頭足類(とうそくるい)である.実にさまざまなグループがあり,時代とともに,だんだん複雑な殻の装飾をもつものへと進化した.白亜紀には,変わった巻き方をしたものもかなりいた.
地球を支配した恐竜 “恐竜”は,爬虫(はちゅう)類の竜盤目(りゅうばんもく)と鳥盤目(ちょうばんもく)を合わせたよび名である.三畳紀(さんじょうき)に最初に現れた恐竜は,全長1mほどの小型のものだったが,ジュラ紀・白亜紀には20mをこえる巨大な種類も現れ,陸上に君臨した.恐竜のほか,翼竜(よくりゅう)や魚竜,首長竜(くびながりゅう)(鰭竜目〔きりゅうもく〕)なども中生代に栄えた爬虫類である. ●チラノサウルス全身骨格 〔複製〕 ●チタノサウルス全身骨格 〔複製〕 ●チロサウルス頭骨
四国島のはじまり 第三紀中新世(ちゅうしんせい)のはじめ(約1900万年前),アジア大陸の東のはしに裂(さ)け目ができ,しだいに拡大して,そこへ海が入りこみ,日本海が生まれた.この変動により,それまでアジア大陸の一部だった日本列島は大陸から切り離され,弧状(こじよう)列島になった.
第一瀬戸内海の生物 中新世の中ごろ(約1600万年前),現在の山陰地方から中国山地をとおり東海地方にいたる一帯には,第一瀬戸内海とよばれる浅い海が広がった.この海にたまった各地の地層からは,同じような種類の貝化石が見つかるが,中にはビカリアやヒルギシジミなどの熱帯性の貝もふくまれている.
カンカン石のふるさと 香川県では,“カンカン石”とよばれ,たたくと金属質の音がする岩石が古くから知られている.これはサヌカイト(讃岐岩〔さぬきがん〕)という,黒色ち密な古銅輝石(こどうきせき)安山岩である. ●パレオパラドキシア全身骨格 〔複製〕
中央構造線の発達 中央構造線は,九州から関東まで1000kmもつづく,わが国第一級の活断層である.その活動は,和泉層群堆積前の白亜紀(はくあき)前期にはじまり,いろいろな時期に性格の異なる活動があった.現在,四国では,右横ずれが優勢な運動をしていると考えられる.
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