部門展示(自然)

 

 地球の誕生,それは奇跡の旅立ちであったともいわれます.太陽との位置関係で,暑すぎず,寒すぎず,そして水の惑星でもあるこの地球は,生物の存在ゆるす唯一の太陽系の惑星であるからです.
 地球誕生からおよそ10億年後,その海のなかで,はじめての生命がうまれました.それがすべての生物のはじまりでした.そして,30億年以上の長い時間をかけて,繁栄と滅亡をくりかえしながら,さまざまな生活様式とかたちをもつ現在の生物へと進化してきました.
 人間が,ヒトとして地球の生物の一員に加わったのは,ほんの数百万年前のことです.しかし,ヒトは数万年前から,ほかの生物とは少しちがった道を歩きはじめました.ほかのあらゆる生物や資源を利用し,自分たちが,この地球の構成員のひとりであることをわすれてしまったかのようになってしまいました.自分たちの生活が,かなりのいきおいで,地球の自然を破壊することにもつながってしまいました.
 この展示室は,徳島というわくをとくに設定することなく,地学,動物,植物の3つの分野の展示から構成されています.
 地学では,岩石のできかたによる分類展示や,鉱物の大きな結晶を,地球の表面部分を構成するもののひとつとして紹介します.
 動物では,種(しゅ)や変異,種分化などの小さなテーマを,「進化」という観点からわかりやすく示し,各分類群の資料の紹介でも,その群の進化のみちすじが紹介できる話題を取り入れて展示しています.
 植物は,日常みなれた風景のなかで,変化していく自然と,人のからみあいを展示しています.

 

 ・いろいろな岩石
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鉱物
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進化のにないて「種」
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いろいろな動物
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生物の生活と自然のしくみ
 

 

 

 

いろいろな岩石

 岩石は,地球の上層部をつくっている物質で,一種または数種類の鉱物(こうぶつ)の集合体である.それはできかたによって,大さく火成岩(かせいがん)・堆積岩(たいせきがん)・変成岩(へんせいがん)の3つのグループにわけられている.火成岩と変成岩の量が圧倒的に多いが,地表の近くでは堆積岩が多い.
 ある地域に露出している岩石の種類や,それぞれの岩石の分布のしかたを調べることによって,その地域がどのように形づくられたのかを知ることができる.

 

宇宙からの手紙

 宇宙からは,1年間に100万トンもの隕石(いんせき)や宇宙塵(うちゅうじん)が,地球上に降りそそいでいる.隕石の多くは,地球と同じ起源をもつ小惑星(しょうわくせい)の一部だと考えられていて,太陽系のおいたちや地球の内部を知る手がかりとして,欠かせないものとなっている.
 隕石は,金属(鉄とニッケルの合金)の含まれる割合によって,隕鉄(いんてつ)・石鉄(せきてつ)隕石・石質隕石の3種類にわけられている.

■テクタイト
 径数cm,垂さ数g程度の黒曜石に似たガラス質の物質.地球上の限られた場所にだけ分布する.球状・しずく状・紡錘状・ボタン状などのいろいろな形があり,表面には浅いへこみがたくさんある.成因については定説がないが,化学組成などから宇宙起源のものではないかと考えられている.

 

岩石の生成−火山・陸上・地中

 火山が噴火すると,マグマの多くは溶岩・火山灰・火山弾(かざんだん)などとなって火口から噴(ふ)き出される.これらは急速に冷やされ,細かい結晶の集合体やガラスになる.こうしてできる岩石が火山岩である.いっぽう,マグマが地下深くでゆっくり冷やされ,固まると,深成岩(しんせいがん)という結晶の粒の大さい岩石になる.
 火山岩や深成岩のように,マグマからできる岩石は火成岩(かせいがん)とよばれている.

■火山弾
 流動性のあるマグマが放出されるときに,空中で特定の形や内部構造をとることがあり,火山弾とよばれている.
 引きちぎられることによってリボン状や紡錘状の火山弾ができ,また空中で表面がかたくなって膨張し,表面がひび割れるとパン皮状火山弾ができる.

 

岩石の生成−海

 岩石はしだいに風化され,礫(れき)や砂,泥になる.そして,風や水などの作用で運ばれ,堆積(たいせき)し,だんだんかたくなり,堆積岩になる.
 堆積岩のもとになる堆積物は,場所によってさまざまだ.陸に近い海底では,陸から運ばれてきた泥や砂が,深海の底ではひじょうに小さな生物の遺骸(いがい)や赤粘土(あかねんど)が堆積する.また,暖かく浅い海中ではサンゴ礁(しょう)が発達し,石灰岩のもとになる.

●マンガン団塊
 中部太平洋 水深5000mあまりの海底
 黒色でボール状の沈澱物で,鉄分を含んだニ酸化マンガンからできている.海底堆積物中に広く分布し,特に深海底に多い.
 貝殻・サメの歯・岩石などのまわりに,同心円状に1000年に10分の1から100分の1mm程度のスピードで成長する.

 

変化してできた岩石−変成岩

 地下の深いところで,熱や圧力,ひずみによって,岩石のつくりが変わったり,新しい鉱物(こうぶつ)ができたりすると,もととは違った岩石になる.これを変成岩(へんせいがん)という.
 変成岩には,マグマのまわりの岩石が焼けるようにしてできた接触(せっしょく)変成岩や,地殻変動(ちかくへんどう)による熱や圧力でできた広域(こういき)変成岩がある.
 広域変成岩の分布する地帯は,変成帯(へんせいたい)とよばれている.

 

鉱物

 石英(せきえい)や雲母(うんも),方解石(ほうかいせき)のような天然に産するほぼ均一な固体物質で,内部に一定の性質をもつものは,鉱物(こうぶつ)とよばれている.
 鉱物は,ふつう小さな結晶と結晶が集まりあい,不規則なかたちをしていることが多い.しかし岩石の空洞(くうどう)など,結晶が自由に成長できる場所では,いくつかの平面で囲まれた規則的な外形をとることがある.六角柱状の水晶や,立方体の黄鉄鉱など,その形は鉱物によって一定である.

 

進化のにないて「種」

 地球上には,おびただしい種類の生物が生きている.
 「すべての生物の種は,一定不変のものではなく,長い時間をかけて変化していく」という生物進化の考えかたは,近年の生物学の研究によって,いっそう確実なものにされてきた.
 現在生きている生物の種は,いずれも36億年にもわたる進化の結果であり,また,未来に向かって新しい種を生みだしていく母体−進化のにないて−でもある.

 

生物の分類

 私たちが,本や食器などを用途や形,色などで分類整理するように,生物学でも,体のつくりや色などの特徴が同じ個体をひとまとめにし,それを「種(しゅ)」とよんできた.そして,よく似た種をいくつかまとめて属(ぞく),さらに科(か),目(もく),綱(こう),門(もん),界(かい)という大きなグループにまとめていく生物分類の枠組(わくぐみ)がつくられてきた.
 しかし,このような生物分類の基準は,いま,さまざまな見直しが行なわれている.

 

 ブルドックと柴犬(しばいぬ)は,ものすごくみかけがちがうのに,イヌという一つの種(しゅ)である.逆に,見かけではまったく区別がつかない生物が,別の種であることもある.
 種を決める基準は,見かけが似ている,というような外見的なものだけではない.重要なのは,同じ種の個体どうしは,おたがいに交配を行ない,その子どももまた,子孫を残していく能力をもっていることである.

 

変異

 人の顔つきや肌の色がそれぞれにちがうように,一つの種(しゅ)に属する個体が,すべての面で同じであることはない.ある種の中に見られるばらつきを変異(へんい)とよぶ.変異には,子孫に伝わっていくもの(遺伝的〔いでんてき〕変異)と,そうでないもの(非〔ひ〕遺伝的変異)がある.
 遺伝的変異は,進化と深いかかわりがある.いっぽう,非遺伝的変異は,温度やエサなど,環境の影響でおこるものが多い.

■ブナの葉の地理的変異−クライン−
 ブナは日本に広く分布している温帯の優占種である.ブナの葉の変異を詳しく調べてみると,南から北へ向かうにしたがって葉の面積が大きくなっている.このように,地理的に連続して形質がしだいに変わることをクライン(地理的勾配〔こうばい〕)という.この現象の原因はよくわかっていないが,後氷期において寒い気候と積雪という厳しい環境のなかで,他種と競争しながらブナが北上していったことに関係あるらしい.

 

新しい種の誕生

 生物のある種(しゅ)が分布を広げた後,何らかの原因でその分布域が分断されると,いくつかの孤立した集団に分かれる.それぞれの集団の中で新しい変異(へんい)が生まれ,それが自然選択(しぜんせんたく)などによって,もととは遺伝(いでん)的に異なった集団に変わっていく.その結果,別の集団の個体との間には子孫を残せなくなると,新しい種が生まれたといえる.これは,種分化のしくみのひとつの例である.

■倍数化による種分化
 ナカガワノギクとリュウノウギクはともにキク属の植物である.この2種の葉の形はちがっているが,花びら(舌状花弁〔ぜつじょうかべん〕)が白色で,頭花の外側の総苞片(そうほうへん)が細長く,体に毛が多いなど,よく似た特徴を持っている.
 種のつながりを知る手段の1つに染色体を調べる方法がある.染色体の形をくらべてみると,ナカガワノギクの染色体はリュウノウギクの染色体が倍に増えた構成になっている.このことから,ナカガワノギクは,リュウノウギクの染色体が倍になることによって新しく生まれた種であると考えられる.

 

いろいろな動物

 地球には,たくさんのいろんな形をした動物たちがすんでいる.その種類(しゅるい)はびっくするほど多く,今のところ約130万種が知られている.高い山の上から,深い海の底まで,地球上のあらゆる所にすんでいる.水をいちばん必要としていて,陸上にすむものでも乾いたところには少ない.
 ほとんどの動物は,人間よりもかなり小型だ.そんな小さな動物たちが生きている世界は,私たちの世界とはずいぶん違っているだろう.

 

刺胞動物門

 サンゴ,クラゲ,イソギンチャクのなかま.ほとんどが海にすんでいて,かわった形ときれいな色で海をはなやかにしている.
 すべて肉食性で,えものをつかまえる触手と大きな口をもつ.触手(しょくしゅ)には刺胞(しほう)とよばれる毒針があり,えものにふれると刺す.刺胞動物の名はここからきている.人がクラゲに刺されるときも,この刺胞で刺される.

■花虫(かちゅう)綱
 サンゴ,イソギンチャク,ヤギのなかま.展示してあるのは,すべて骨格(こっかく)だけの標本.
 サンゴは,小さなイソギンチャク型のものがたくさん集まってできていて,骨格標本でも,よく見るとそのしきりがわかる.

■鉢虫(はちむし)綱
 クラゲのなかま.クラゲは自分で動く力をあまりもたず,波にゆられてただよう.体は半透明で,ぶよぶよしている.そのため,英語ではジェリーフィッシュ(ゼリーの魚)とよばれている.
 夏になると,風や波で海岸近くによせられてくる.

●ミルク・クラウン
 水にものを落とすと,王冠(クウラン)に似たはねかえりができる.これをミルク・クラウンとよんでいる.刺胞動物には,このミルク・クラウンに似たかたちをしたものが多い.これは,水の中で伸び縮みするのにつごうのいいかたちなのかもしれない.

 

軟体(なんたい)動物門

 貝,イカ,タコなどのなかま.多くは水中で生活しているが,カタツムリなど陸に上がったものもいる.軟らかい体を硬い殻(から)でまもっているが,イカ,タコ,ナメクジなどのなかには殻をもたないものもいる.
 海の貝は,陸の貝にくらべて,硬く重い貝殻をもっていることが多い.昔から,美しい貝殻は人気が高く,夢中になって集める人も多い.

■ヒザラガイ綱
 だ円形で,せなかに8枚に分かれた板状の殻(から)をもつ,きみょうな形の貝.原始的な貝で,5〜6億年前からあまり形は変わっていない.
 磯(いそ)などでふつうにみられ,岩にへばりついている.かたくくっついているので,とるのは大変!

■ツノガイ綱
 つのぶえのかたちをした殻をもっている.殻(から)の口は円形,多角形,あるいは卵形と,種類によっていろいろある.殻は先の方にも穴があいていて,そこから呼吸のために水をすいこむ.原始的な貝で,4〜5億年前からあまり形は変わっていない.

■マキガイ綱
 軟体(なんたい)動物の中で,いちばん種数が多い.理由はわかっていないが,ほとんどの種類が右巻きというのはおもしろい.右巻きか,左巻きかは,貝殻を上からみて時計回りならば右巻きとして決める.
 殻をもたないナメクジやウミウシなどもこのなかま.

■ニマイガイ綱
 二枚の殻は体の左右についている.種類によって,殻の形や大きさは,左右で同じだったり,違ったりする.
 ニマイガイは水底の泥や砂のなかにかくれたり,岩にくっついている.なかには,ホタテように泳ぐものもいる.

■イカ綱
 イカ,タコ,オウムガイなどのなかま.軟体(なんたい)動物の中では,いちばん頭がよい.
 イカのひれは,水中でバランスをとるのに役立つ.
 オウムガイは原始的な貝で,生きている化石とよばれている.


●貝のとげ
 貝にはとげをもつものが多い.とげの役目は,貝殻の大きさを増したり,貝殻の強度を高めることで,魚やカニなどから食べられにくくすることだと考えられている.

●貝のかたち
 貝殻にはいろいろなかたちがあるが,大まかにみると,その違いはたった4つの条件にもとづいている.マキガイもニマイガイもそれらの条件が違うだけで,基本的なつくりは同じだ.

4つの条件
 1.母曲線のかたち
 2.母曲線の拡大率(W)
 3.母曲線の位置
 4.回転軸に対する母曲線の移動率(T=a/b)

 

節足(せっそく)動物

 昆虫,カニ,クモなどのなかま.地球上でいちばん繁栄(はんえい)している動物で,いろんなところにすんでいる.種数もいちばん多く,すべての動物の約80%をしめる.体は硬い外骨格(がいこっかく)でおおわれ,名前のとおり,足や胴体が節になっている.機械的な感じがするのもそのためだ.
 近年,節足動物の起源について,新しい学説が出され,話題をよんでいる.

■節足動物の系統と問題点
 節足動物は,甲殻(こうかく)類,鋏角(きょうかく)類,単肢(たんし)類の3つにわけられている.しかし,それらは1つの共通の祖先(そせん)からでなく,それぞれ別べつのミミズに似た祖先から進化してきたらしい.そうすると,これまで“節足動物”として,まとめて呼ばれてきたものは,由来(ゆらい)の異なるものどうしのよせ集めということになる.この3つのグループは,大あごの由来や足の構造などで,かなり違っている.

■単肢(たんし)動物門
 昆虫,ムカデ,ヤスデなどのなかま.ムカデは1つの体節(たいせつ)に1対の足をもち,昆虫などの小動物をたべる.ヤスデは1つの体節に2対の足をもち,腐(くさ)った落葉や菌類(きんるい)を食べる.昆虫は胸(きょう)部に3対の足をもつ.

■甲殻(こうかく)動物門
 エビ,カニ,ヤドカリ,ダンゴムシなどのなかま.大部分は海にすみ,大型のものもいる.はさみをもつものも多く,エサを食べるときなどにじょうずに使う.
 ヤドカリのなかまには,カニに似た形をしたものが多く,まちがいやすいが,ヤドカリは4対,カニは5対の足をもつことで区別できる.

●カニのかたち
 カニにもいろんなかたちがあるが,よく見ると基本的なつくりは似ている.あるカニのかたちを規則(きそく)的にゆがめると,別のカニのかたちに変わる.

■鋏角動物門
 クモ,サソリ,ダニ,カブトガニなどのなかま.
 口の近くに,ものをはさむための鋏角(きょうかく)をもつ.これはこのグループの特徴となっている.歩脚(ほきゃく)は4対で,体は頭胸(とうきょう)部と腹部の2つにわかれている.
 カブトガニは原始的な動物で,4億年前から形は変わっていない.

■昆虫綱(単肢動物門)
 すべての生物の中で,種数が一番多く,私たちにもなじみのふかいのが昆虫である.
 体は小さく,卵から成虫になるまでの発育段階に応じて,何回か姿を変えることによって,乾燥や寒さ,暑さなどに耐えることができる.成虫は,自由に飛んだり,歩きまわって,たくさんの卵を産む.このようにして,この6本足の小さな動物たちは,地球上のありとあらゆる環境を生活の場とすることに成功した.

コウチュウ目:カブトムシやクワガタムシなどのなかま.昆虫の中で,もっとも種数が多く,形も変化に富んでいる.
 成虫の前ばねは,硬くなって体を保護し,敵の攻撃から身を守る役目をしている.体全体がヨロイでおおわれているように見える.飛ぶときには,前ばねを開き,その下にたたみこまれていた後ばねを広げて,はばたかせる.前ばねは,バランスと舵(かじ)をとる役目ももっている.

チョウ・ガ目:名前のとおりチョウとガのなかま.体全体が,魚のウロコのような形をした鱗粉とよばれるものでおおわれている.はねの美しい色や模様は,すべてこの鱗粉の組みあわせでつくられている.
 チョウ・ガの幼虫は,イモムシ,ケムシなどとよばれ,ほとんどのものは,植物の葉や茎を食べて育つ.しかし,成虫になると食べ物は変わり,花の蜜や樹液などを,ゼンマイのような口をのばして吸う.


■擬態
 生物は,生きるために様ざまなくふうをしている.それらのくふうのなかに「擬態」とよばれる現象がある.たとえば,まわりの環境にとけこんで敵に気づかれないようにするもの(保護色),逆にハデな色で相手に注意をあたえるもの(警告色),毒をもたないものが毒をもつものにそっくり似るもの(ベーツ型擬態)などである.擬態がほんとうに効果があるのか疑う人も多いが,自然のすばらしさを感じる現象ではある.

 

棘皮動物門

 ヒトデ,ウニ,ナマコ,ウミユリのなかまなど,きみょうな形をした動物たち.ヒトデなどは右も左もなく,頭もなく,海の底であまり動かない生活に適した形をしている.ウミユリ以外のほとんどのなかまは,口を海底に向けている.
 私たちが食べるのは,ウニの生殖腺とナマコ.棘皮(きょくひ)とは,皮ふに棘(とげ)をもつという意味.

 

脊索動物

 脊索(せきさく)動物は,ホヤ,ナメクジウオのように背骨のない原索(げんさく)動物と,フグ,トカゲ,ヒトのように背骨のある脊椎(せきつい)動物からなる.原索動物はすべて海産で,1300種ほどを含むにすぎない.いっぽう,脊椎動物には多くの種が含まれ,海,川,湖,陸上のさまざまな場所で生活している.
 脊椎動物は,化石が残りやすく,類縁関係がよく調べられているが,まだ問題も多い.

■脊椎動物の起源
 脊椎動物の祖先がどんな生物であったか,まだよくわかっていない.しかし,原索動物のナメクジウオのように,脊索とよばれる体を支える棒状の器官,その背面の神経管,および鰓裂(さいれつ)をもつ生物であったことはまちがいない.ナメクジウオは,脊椎動物であるヤツメウナギの幼生ともよく似ている.

■四足動物の起源
 デボン紀のシーラカンスのなかまのユーステノプテロンと,両性類のイクチオステガは,たがいによく似ている.そのため,四足動物はシーラカンスのなかまから進化したという考えが有力だった.しかし,近年,ハイギョのなかまこそが四足動物に近い,という考えがだされ,議論をよんでいる.

 

生物の生活と自然のしくみ

 自然の中でくらしているさまざまな生物は,ひとつの生態系の中で,食ったり,食われたり,栄養をよこどりしたり,競争したり,助けあったりしながら,おたがいに関わりあって生きている.そのバランスがくずれると,多くの生物に影響がおよんでしまう.
 わたしたち人間も例外ではない.同じ生態系の中にくらす一員でありながら,人間の活動がほかの生物間のバランスをくずしてはいないだろうか.

 

寄生植物と腐生植物

 植物のなかには,寄生(きせい)植物と腐生(ふせい)植物という風変わりなものがいる.寄生植物は他の植物の枝や根にくっついて栄養をとって生きており,腐生植物は落葉などに含まれる栄養を利用している.ふつう,緑色植物は光合成によって栄養を自分でつくりだすことができるが,寄生植物や腐生植物は,生活に必要な栄養を自分だけでまかなうことはできない.しかし,子孫を残すための器官である花が異常に発達しているものが多い.

■寄生植物
 寄生(きせい)植物は,特定の寄主(きしゅ)に寄生することが多い.寄生根(きせいこん)とよばれる特殊な根を寄主の体の中にのばし,しっかりと体を支え,栄養を吸収する.寄生植物には,まったく葉緑素がなく,寄主に栄養を依存している全寄生のものが多いが,葉緑素を持ち,少しは光合成のできる半寄生のものもいる.

■腐生植物
 腐生(ふせい)植物は,暗く湿った林内で,落葉や枯れ木,動物の死体やふんなど,生物の遺体や排泄物(はいせつぶつ)を分解して,栄養源にしている.
 ギンリョウソウやツチアケビなどは,菌と共生していて,その菌が落葉などを分解して作った栄養をもらって生活している.これを特に菌根(きんこん)植物とよんでいる.

 

花粉と種子の散布

 生物にとって,配偶者(はいぐうしゃ)をみつけ子どもを生み出すことは,基本的でとても大事なことだ.植物は動物と違って自分では移動できないので,花粉や種子を誰かに運んでもらわなければらない.その運び屋は風や水であったり,動物であったりする.
 それぞれの植物は,自分のすむ環境に応じて運び屋を選び,そして運んでもらいやすいようなしくみを発達させている.

■花粉の媒介
 風媒花(ふうばいか)は,たくさんの花粉をつくって,風まかせでそれをばらまく.花粉づくりに力をいれて,花はめだたない.
 虫媒花(ちゅうばいか)は,虫に花粉を運んでもらうために,きれいに化粧(けしょう)したり,蜜(みつ)を用意する.花の努力にもかかわらず,蜜だけ持っていく虫もいる.

■種子の散布
 動けない植物は生活の場所を広げるために,種子を遠くに移動させるくふうをしている.
 種子は羽やパラシュートをつけて風で飛んで行ったり,鈎(かぎ)で動物にくっついて運ばれたりする.アリに運んでもらうために,アリがよろこぶおまけ(付属体)をつけた種子もある.

 

森の生き物たちのつながり

 空気中の二酸化炭素,土壌(どじょう)中の硝酸塩(しょうさんえん)などの無機物(むきぶつ)から,生きて行くのに必要な有機物(ゆうきぶつ)を作れるのは植物だけだ(生産者).動物は,植物やほかの動物を食べることによって有機物を体内に取り込む(消費者).動植物の遺体などは,土の中の微生物によって,植物が利用できる無機物に再び分解される(分解者).
 植物・動物・微生物は,たがいに食い,食われることにより,物質を循環(じゅんかん)的に利用している.

 

追いやられる生き物たち

 おじいさんやおばあさんに,昔のようすを聞いてみよう.ビルのたちならぶ街(まち)は,クワガタムシをとった林だったかもしれない.汚れてにおいのする川は,魚やホタルのすむ清流だったかもしれない.
 かつてそこにいた動物や植物たちはどこにいってしまったのだろう.ほんとうにいなくなってしまったのだろうか.もしそうだとすると,私たちは二度とその姿を見ることはできないかもしれない……

■絶滅する生き物たち
 近年,開発や汚染によって,野生生物はすむ場所をうばわれている.また,毛皮や鑑賞用として捕獲採集され,個体数が激減している.中には,そのような外圧に耐えきれず,絶滅してしまったものもいる.限られた生活環境の中,わずかな個体数で細ぼそと生きている絶滅寸前の種も多い.日本のシダ,種子植物だけでも,そのうちの6分の1にのぼる種が絶滅の危険にさらされているという.

■都市化と帰化植物
 道路ができ,コンクリートのビルが建ち,都市化が進むにつれ,私たちの周囲では,外国からやってきた帰化植物が急に増えてきた.中には,わが国に昔からある在来種とよく似ているものもあり,うっかりすると見まちがえてしまう.帰化植物は,都市のように人の影響が大きい場所を好んで生活するものが多く,自然度をはかるものさしにされる.帰化植物の増加は,昔ながらの自然がなくなってきていることを示している.

 

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