植物の同定依頼について

 


下にも書きましたが写真による同定は困難を極めます。googleで「花 掲示板」を検索し、画像を投稿して花の名前を調べることのできる掲示板が見つかりますので、そちらで相談されることをお奨めいたします。

また徳島県外の方の同定依頼を受ける場合がありますが、他県の植物については情報が少ないのでお断りするケースもあります。お近くの博物館等でも同定依頼を受けている場合がありますので、そちらをお奨めいたします。


 この植物は何か?という問い合わせをよくいただきます.そうした問い合わせで植物の名前を調べる作業を同定すると呼びます(鑑定すると言う場合もあります).博物館では日常業務の中のレファレンス業務ということで,そうした同定を受け付けていますが,電話やFAX,最近では電子メールによる問い合わせがあります.その際デジタルカメラなどで撮った写真を送ってこられる方がおりますが,残念ながらたいてい何かわからない写真がほとんどです.何度か写真をとりなおしていただきますが,良い結果は得られません.なぜなら,植物を同定する際に何がポイントになるかわからないまま写真を撮ってもその植物の特徴が撮れていないからです.この植物を見分けるカギになるポイントは,それぞれの植物によって違っていますので知識や経験が必要なのです.

 私たちが一番残念に思うのは,写真では何度もやりとりをするといった手間をかけた割に,最後の結果が「ヨモギ属」とか「ヨモギの一種」とか「ヨモギのなかま」とか「たぶんオトコヨモギ」のような返事になって,依頼者も答える方もフラストレーションのみたまるという事態になることです.

 特徴を知らなくても実物があれば良いわけですから,いちばん簡単なのが植物の標本を送ってもらうことで,花や葉,実(果実)があれば最近入ってきた外国産の植物や分類が困難なものでなければたいていわかります.しかし,一般の方に標本を送ってくださいというと,たいてい「標本の作り方がわかりません」とか「標本は作るのが手間と時間がかかるので」とおっしゃられてなかなか実現できないのが現状です.生きている植物をおくってくださる方もおられますが,ひからびたり,腐ったり,花が散ってしまったりと残念な状況になることが多々あります.一番良いのは植物標本のきちんと作った後お送りいただくことですが,ここではそうした一般の方ができるだけ時間や手間をかけずに簡易な方法で標本を送る方法を紹介します.

 こうして標本を送ってくだされば,資料(標本)の収集という業務にもつながりますし,新たな知見が得られればこちらとしてもプラスになります.ただ,同定依頼にお答えするのはさまざまな日常業務の中の一つであり,また時間や手間がかかる作業でもあります.私が採集した標本や博物館に寄贈していただいた標本で未同定のものがたくさんありますので,全ての依頼にお答えできない可能性があることをあらかじめご了承ください.

※下記で写真で示しました事例ではナルトサワギクを用いています。これは同植物が特定外来生物に指定される前に作成した資料です。現在では、ナルトサワギクのような特定外来生物に指定された植物については確実に殺さないと移動できませんのでご注意ください。


新聞を1〜2日分用意し,中央で半分に破ります.

新聞を新聞紙を3回折るとA4サイズの封筒に収まる大きさになります.茎を要所要所で切ったり折ったりしてかまいませんので,1〜2日分の新聞を3回折ってその中に葉のついた部分,花のついた部分,実のついた部分をはさんでA4サイズの封筒でお送りください.

さらに中央で半分に破ります.この1枚のサイズが通常の標本の大きさになります.

それを2つ折りにします.この中に標本を挟みます.

植物を用意します.植物を見分ける場合は,花や実が特徴となりますので,できるだけそれがついたものを採ってください.また,草の場合は根元の葉や地下茎の様子が特徴となりますのでなるべく根から採って,洗って土を落としてください.

植物が大きい場合は新聞紙に入りませんので鋏で適宜切ります.

※ここではナルトサワギクを例に示しましたが、2005年以降ナルトサワギクは特定外来生物に指定されましたので、生きた状態での移動ができません。したがって、標本を作成して送っていただくことはできませんのでご注意ください。現地でアルコール等に浸して、ナルトサワギクが生きていない状態にすれば、特定外来生物の「生きたままでの移動」にあたりませんので、標本を作製してお送りいただくことは可能です。

先に用意した新聞を5枚以上重ねて植物を挟みます.たくさん新聞をつかう理由は,この新聞が水を吸い植物が乾きますので,水をできるだけ吸わせるためと,クッションの代わりになり挟む力が均等になりやすいためです.

ここで植物が新聞からはみ出るようだったら,さらに茎を切って2つに分けるか,枝を折って新聞紙のなかに入れます.

新聞紙を閉じます.するとA4サイズよりやや小さな大きさになります.

残りの植物も同様にはさみます.

先に作ったものの上に重ねていきます.

最後に5枚ほどの新聞を用意し,先に作った新聞の空いた側から閉じます.

こうすることで左右に植物がずれではみ出ることはありません.

気温が高い時期や植物が濡れている時などこのまま送ると到着するまでに腐ってしまいますので,左の状態で本などで重しをして1日くらい乾かした後,新しい新聞紙に替えて送ってください.

それの上下に厚紙や段ボール紙を敷いてガムテープでしっかりとめます.この状態でA4の封筒に入れて送ります.

もっと簡単な方法

新聞紙を破るのが面倒だと言う人は,B5サイズ以上の白黒印刷の漫画雑誌を買ってきてそれに挟む方法でもかまいません.カラー刷りや上質な紙をつかった雑誌は水を吸いませんので不向きです.古い電話帳も使えます.その際ティッシュやキッチンペーパを植物の上に置くとクッションになり,仕上がりがよくなります.あとは厚紙を上下に挟むかそのままガムテープで開かないように固くとめて送ってください.

 

 

標本を送る際に,以下のことを書いたメモを入れてください.

  1. 採った場所(○○県○○市○○町字○○のようにできるだけ詳しく.川のそば,暗い林の中など生えている環境も書いてください)
  2. 採った人
  3. 採った日付
  4. 花の色やにおいの有無(乾くと消えてしまう特徴があれば教えてください) 
 

今回はA4サイズくらいなら,家庭でも探せば封筒や厚紙が見つかるでしょうからそのサイズの作成方法を紹介しました.通常の標本サイズでも最大の長さが60cm以内で縦横高さの合計が90cm以内,4kg内であれば,第一種郵便物(封書)の定形外郵便物扱いになりますので,比較的安価に送ることが可能です(参考:郵便料金表郵便の重量大きさ).送料等は自己負担でお願いいたします.

 

 

 

送り先 〒770-8070
    徳島市八万町向寺山 徳島県立博物館
    小川 誠
    電話:088-668-3636
    電子メール:
    上記の簡易な方法で作成した未乾燥の標本を送る前には長期出張などがあると腐ってしまいますので,事前に必ず連絡してください.


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