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徳島県海部郡日和佐町の南阿波サンラインから千羽海岸に降りると,ウバメガシの林に囲まれた青く澄んだ水の海岸が見えてきます。その浜辺を歩いていくと黄色の豆のような花をつけたキクが現れます.これがシオギクです(図1).シオギクは高知県と徳島県の太平洋沿岸に分布しています. 図1 シオギク(徳島県海部郡日和佐町千羽海岸) |
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千羽海岸の手前の南阿波サンラインの道路横の斜面に白いキクが見られます.これはリュウノウギク(図2)で,シオギクと同じキク属です.白く見えたのは花の周辺に花びらのように見える舌状花があり,それが白色をしていたためです.花の中心は黄色の筒状花になっています. |
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シオギクはこのリュウノウギクとはちょっと変わっています.よく花を観察してみると,花びらのように見える舌状花がなく黄色の筒状花だけです(図3).キク属は虫に花粉を運んでもらう虫媒花で,舌状花が虫の目を引きつけるのに役立っているようです.ではシオギクはどうか観察してみましょう。花にはたくさんの虫が飛んできています。シオギクの花は舌状花がないものの筒状花はあざやかな黄色をしています。それが一斉に咲くと黄色の絨毯をしいたように目立ちます。それで虫が集まって来るのでしょう。 |
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■ヤッコソウ |
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この奇妙な形には秘密が隠されています.ヤッコソウをよく観察していると,頭に帽子をかぶったものと(図4右),その帽子がとれて頭がむき出しになったもの(図4中央,左)があることがわかります.この帽子のようなところが花粉が出る部分で,帽子がぬげてむき出しになったところが雌しべの柱頭です.人が手を広げたような形をした鱗片葉の付け根には甘い蜜がたまっていて,昆虫や小動物がその蜜をなめにやってきます.鱗片葉の隙間に,頭を入れている間に花粉のでる場所にからだが触れ,花粉がからだにつきます.そして,別のヤッコソウの蜜をなめにいったとき,この帽子がとれて雌しべの先がむき出しになっているとそこに花粉がつくという仕組みです. 花粉を媒介させようとする植物の知恵ですね. |
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博物館で開催している野外観察会ではもっとおもしろいことをたくさん発見できることでしょう.みなさんも,ぜひ一度参加してみてください. 小川 誠(学芸員:植物担当)
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