●フジバカマ−保全のためのネットワークの大切さ フジバカマは日当たりの良い草地に生える多年草で,環境省では絶滅危惧II類,徳島県では絶滅危惧I類になっています. ところが,その翌年に現地を訪れてみると,用水路沿いに生えていたフジバカマの生息地は掘り起こされて,土が完全に取り除かれてしまっていました.古い用水路が石垣で,一部崩れかけていたために地元の要望で徳島市が水路のコンクリート3面貼りの工事を行っていたのです.フジバカマなどの絶滅危惧種の詳しい産地を公表することは,掘り採られる可能性があり避けてきました.そのことが仇となり,フジバカマの存在に気が付かれず何の配慮もされずに工事されてしまいました. |
用水路沿いに生えるフジバカマ(上)とその花 |
フジバカマの生育地(左,2001年9月撮影)と破壊された後(右,2002年11月撮影).矢印はフジバカマ. |
レッドデータブックを発行した徳島県の自然共生室に連絡をとり,その日のうちに徳島市の関係機関や工事業者と回復作業を協議しました.幸いなことに掘り採った土の一部を現場近くに残してあったのでフジバカマの株が残っていないか調べることになりました.11月の寒さに震えながらスコップや重機などを使って土を掘り起こしたところ3株が見つかり,それを庭で栽培しました.埋まった際のダメージで1株は枯れてしまいましたが,2株は残りましたので,自然共生室に連絡をとり,そのコーディネートで近くの小学校のクラブ活動の一環として植え戻しを行うことになりました.そのうちの1株は今ではすくすくと育ち,秋には花を咲かせています.今はまだ個体数も少ないですが,ここから種子が飛んで周辺にフジバカマが広がっていくことでしょう. |
徳島市立上八万小学校の児童によるフジバカマの植え戻し作業 |
それぞれにつながりが無いと,効率的な保全活動はできない. |
それぞれがネットワークを作り,スムーズな情報交換を行うことによって効率的な保全活動ができる. |
工事担当者と話しをすると,絶滅危惧種が工事による影響を受けるという情報があればできるだけ対応はするが,小さな工事では調査を行う費用がないとのことです.しかしながら,専門家や植物愛好家の元にはその情報があるので,それを有効活用できるネットワークができれば,保全のための活動がスムーズに進みます.(小川 誠) |