ワタヨモギ

−標本の大切さ−

 ワタヨモギはキク科の多年草で,ヨモギに似ていますが,葉の上面(表側)にたくさんの白点があることで区別されます.環境省では絶滅危惧IB類,徳島県でも絶滅危惧I類となっています.

 山口県や愛媛県,高知県で過去に採られた標本が残っていますが,それらの場所では現在は生育が確認されていません.現在確認できるのは徳島県と沖縄県だけです.徳島県が産地数や個体数が国内で最も多くなっています.しかし,住宅などの土地造成のためにワタヨモギの生育範囲が狭まっています.また,ヨモギと交雑し雑種を作っていますので,個体数も減っています.

 沖縄県の産地が発見されたのは,京都大学にヨモギ属の標本を調査に行った際に,同県で採られた標本を見つけたことがきっかけです.その標本はヨモギ属の一種とされており,形がおかしいので葉の上面を確認したところ,白点が多数あり,ワタヨモギの可能性があることがわかりました.ただ,白点の形成が不十分なことや葉の形が異なっているので雑種の可能性があり,現地の沖縄県に飛んだところ,雑種と共にワタヨモギが生育していることが確認されました.絶滅危惧種の採集はいけないと思われるかもしれませんが,配慮しながら必要最小限の標本を採集し,標本庫に納めておかないと現状の把握すらできなくなります.

ワタヨモギワタヨモギ(上)とその葉の上面(下).

沖縄県の標本(京都大学)



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