吉野川の河口の植物
吉野川の河口の植物は塩沼地の植物と海浜植物の大きく2つに分かれます.
■塩沼地の植物
河口では淡水と海水とが混じって汽水となり,潮が引くと砂や泥の地面が現れます.こういった場所を塩沼地と呼びますが,ここで生育するためには,塩分濃度の変化に耐える必要があり,他の場所でみられない植物が生えます.
吉野川では河口から第十堰までがこうした塩沼地の環境となっています.河口付近ではヨシやアイアシが群落を作り,より水深の深い部分ではシオクグが生えています.
第十堰と河口のちょうど中間の位置に当たる徳島市と藍住町を結ぶ名田橋付近ではウラギクの群落が見られます.ウラギクはノコンギクのなかまですが,葉が厚く多肉になっています.ウラギクは最近少なくなった植物の一つで,環境庁の絶滅危惧植物調査対象種になっています.
ウラギク
また,この名田橋付近は潮干狩りがさかんなところなのですが,潮が引くと現れる砂や泥の場所にはイセウキヤガラが生育しています.このイセウキヤガラは,今までコウキヤガラという別の種と思われていた物ですが,最近の調査で大きな群落が第十堰より下流にあることがわかりました.もともとイセウキヤガラは三重県桑名市の揖斐川で見つかり名付けられたものですが,北海道から九州にかけて点々と分布していて,四国では他に高知市からも見つかっています.しかし,吉野川のような大きな群落は他にはなく,貴重な群落といえます.
イセウキヤガラ.左:芽生え.中央:開花期.右:花序の拡大
■海浜植物
吉野川の河口先端付近の南岸から川の中央にかけて砂州が伸びています.そこはもう海といってもよく,砂浜に波が打ち寄せています.そこにはハマヒルガオ,コウボウシバ,コウボウムギ,ハマボウフウ,ケカモノハシ,ハマエンドウ,ハマゴウといった海岸の砂浜に生える植物が生育しています.また,ここには鳴門市を中心として広がっているナルトサワギクという帰化植物が新たに侵入しています.この砂州の上流側には干潟が広く広がっていて,砂州は海との環境を分ける役目をしています.
河口の砂浜の群落の様子
河口の砂浜の生える植物.左:ハマエンドウ,中央:ハマヒルガオ,右:ナルトサワギク(帰化植物)
(小川 誠)
[吉野川の植物] [参考文献]
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