徳島博物館研究会(第1期)

 

 1980年代から90年代にかけて、博物館界は劇的な変動の波にさらされました。それは一言でいえば、「博物館バブル」の生成から終焉でした。バブル生成期には、各地で博物館建設が相次ぎ、それに伴って学芸員の採用も飛躍的に増えました。ところが、長引く不況にさらされ、国家・地方財政の行き詰まりが明白となった今、一転して博物館は冬の時代の最中にあります。

 しかし、この状況を嘆くだけでは展望は開けません。このような時期だからこそ、博物館(もちろん学芸員も)の存在意義が問われているのであり、主体的な哲学を構築することが不可欠といえるでしょう。その意味では、今だからこそ、博物館を対象化した議論をすべきと考えられます。

 この研究会は、以上のような認識に立ちながら、博物館及びその類縁機関である文書館・図書館等で実務に携わる者を中心として集い、議論を交わしていこうとするものです。当初、2000年春から2002年春までを活動期間と考え発足しました。活動内容は2〜3か月に1回程度の定例会を開催し、解散時には参加者それぞれの考えるところをまとめて公表したいと考えました。阿波銀行学術・文化振興財団からの助成もいただき、何とか論文集『地域に生きる博物館』(教育出版センター、2002年3月、定価2,800円)の刊行にこぎつけました。

 刊行後、いろいろな方からご感想・ご意見を頂戴しました。私たちもまた、反省すること、考えることが多々ありました。そして、これで終わらせるのではなく、さらに発展的に、学芸員が結集・討議する機会をつくっていきたいと考えるに至りました。もちろん、これまで行ってきたように学芸員だけに限定せずに、幅広い参加を得たいと思っています。

 今はしばしの休眠期間として、第2期研究会の立ち上げに向かいたいと考えています。

 

活動状況

2000.2.5

発起人会(徳島県立文書館)

金原佑樹(徳島県立文書館)、松下師一(松茂町歴史民俗資料館)、長谷川賢二(徳島県立博物館)により発足。役割分担の決定。会員募集開始。

2000.2.19〜20

第5回四国地区歴史系学芸員・アーキビスト交流集会(高松市)

上記3名により、合間に今後の方針について若干の協議。

2000.5.19

第1回例会(徳島県立博物館応接室)

長谷川賢二(徳島県立博物館)「博物館と教育をめぐる課題」

松下師一(松茂町歴史民俗資料館)「地域博物館ネットワークの構築−市町村立博物館と県立博物館−」

2000.7.17

第2回例会(徳島県立博物館応接室)

金原祐樹(徳島県立文書館)「文書館と博物館の間−資料の収集と活用−」

魚島純一(徳島県立博物館)「博物館施設におけるくん蒸の現状と今後の課題」 

2000.10.6

第3回例会(徳島県立博物館講座室)

吉村智博(大阪人権博物館)「博物館における部落問題展示について(試論)」 ※ゲスト報告

2000.11.17

第4回例会(徳島県立博物館講座室)

佐藤陽一(徳島県立博物館)「生物の差別的名称をどうするか―魚類学会シンポジウムから」

2001.1.22

第5回例会(徳島県立博物館応接室)

両角芳郎(徳島県立博物館)「博物館の学芸組織に関する一考察」

松下師一(松茂町歴史民俗資料館)「非民俗系学芸員による民具資料の整理について―松茂町歴史民俗資料館における実践の記録 ―」

2001.3.3〜4

第6回四国地区歴史系学芸員・アーキビスト交流集会(高知県春野町・高知市)

会員数名参加

2001.3.14

第6回例会(徳島県立博物館応接室)

新 孝一(徳島県立図書館)「『図書館の自由』と資料制限」

中尾賢一(徳島県立博物館)「資料整理・登録の方法−徳島県立博物館の地学資料の場合−」

2001.5.28

第7回例会(徳島県立博物館応接室)

郡司早直(海南町立博物館)「展示室の説明―入館者と学芸員の交流―」

根津寿夫(徳島市立徳島城博物館)「博物館の運営形態について」

2001.6.16

第8回例会(徳島県立博物館応接室)

鞆谷純一(徳島県県立池田高等学校)「公共図書館における集会・文化活動について」

2001.8.10

第9回例会(徳島県立博物館応接室)

須藤茂樹(徳島市立徳島城博物館)「博物館実習と学芸員養成」

2002.3.3〜4

第7回四国地区歴史系学芸員・アーキビスト交流集会(新居浜市)

会員数名参加

2002.6.30

『地域に生きる博物館』刊行記念慰労会(第1期活動終了)

  

 

 

 

 [「博物館を考える」TOP] [長谷川賢二のページTOP