徳島県立博物館 脊椎動物担当学芸員のホームページです。専門は淡水魚類の分類や進化です。
井藤大樹のホームページ / Taiki Ito |
主に川や湖沼に棲む魚(淡水魚)を専門とし、研究をしています。特にコイの仲間やドジョウの仲間の形態や分類、進化について研究を進めています。魚たちは色々な生態を持ち、様々な姿かたちをしています。このような多様性はどのように進化してきたのでしょうか。
淡水魚類の分類に関する研究
コイ科ハス類を対象とした研究オイカワやハスの仲間の系統分類が私の大学・大学院での研究テーマでした。
オイカワの仲間は日本を含む東アジアから約20種が知られています。日本にはオイカワ、ハス、カワムツ、ヌマムツの4種が生息しています。ハスは日本では、滋賀県の琵琶湖と琵琶湖から流出する河川、および福井県の三方湖(今は絶滅)にしか自然分布しませんが、オイカワやカワムツ、ヌマムツは西日本の河川や湖沼で普通に見ることができる、いわゆる“雑魚”です。オイカワの仲間がたくさん見られるのは韓国や中国、台湾、ベトナム等でも同様で、東アジアの雑魚の代表と言っても過言ではありません。
このオイカワの仲間は20種程度の小さなグループですが、体が小さく、主に藻類を食べるような種から体が大きく、他の魚を食べる肉食性の種が含まれ、生態や姿かたちが多様に進化しています。オイカワの仲間の姿かたちの多様性や進化について研究を進めています。
【研究成果】
・コイ科ハス類における頭部側線感覚管の接続パターン
ホトケドジョウ類を対象とした研究
日本に自然分布するホトケドジョウの仲間はエゾホトケドジョウ、ホトケドジョウ、ナガレホトケドジョウ、トウカイナガレホトケドジョウの4種で、エゾホトケドジョウは北海道と青森県に、ホトケドジョウは東北地方から近畿地方に、ナガレホトケドジョウは主に瀬戸内海周辺と四国の一部に、トウカイナガレホトケドジョウは愛知県と静岡県の一部に分布しています。ホトケドジョウやエゾホトケドジョウは河川下流部の湿地帯や湧水地などを主な生息地にしていますが、ナガレホトケドジョウとトウカイナガレホトケドジョウは河川の源流部に棲んでいます。河川源流域に生息するホトケドジョウの仲間は世界中でこの2種のみです。
ナガレホトケドジョウとトウカイナガレホトケドジョウはながらくホトケドジョウと同じ種だと考えられてきました。しかし、前述のとおり、ホトケドジョウと生息場所が異なることや遺伝的・形態的に独自の特徴を持つことが分かり、私を含む研究グループが2018年にナガレホトケドジョウを、2019年にトウカイナガレホトケドジョウを新種として記載しました。ナガレホトケドジョウやトウカイナガレホトケドジョウがどのように河川源流部に進出し、進化したのかについて研究を進めています。
【研究成果】
・福井県で発見されたナガレホトケドジョウの新たな地域集団
・ナガレホトケドジョウの新種記載
徳島県を流れる河川の魚類相調査
徳島県には吉野川をはじめ、多くの川が流れています。豊かな自然と美しい川が残る徳島県にはたくさんの種類の淡水魚類が生息しています。しかし、河川改修やダムの建設、外来種の侵入などによって徳島県の川の環境は大きく変化し、在来魚類にも影響を与えています。どの川にはどんな魚が生息しているのか、また、過去と比べて生息する魚がどのように変化しているのかを調査しています。
【研究成果】
・穴吹川の魚類相
・徳島県初記録のナンヨウボウズハゼ
・コウノトリ生息エリアの魚類図鑑
・園瀬川の魚類相
・伊勢田川の魚類相
徳島県の沿岸部に生息する魚類調査
徳島県は、南部が太平洋、北部が播磨灘に面し、それらの間を紀伊水道がつなぎます。徳島県の沿岸環境はとても多様で様々な魚が生息します。しかし、いままで徳島県沿岸に生息する魚類の情報はほとんどありませんでした。徳島県にはこれまで記録されたことのない魚類が人知れず棲んでいます。これらを記録することは徳島県の自然の豊かさを知ることにつながります。
【研究成果】
・アマハゼ
・オチョコナガミミズハゼ
・ナンセンハゼとイチモンジミミズハゼ