日 時 平成16年9月9日(木) 13:30〜16:00 場 所 徳島県立博物館 3 階
講座室 次 第 1 開会 2 館長挨拶 3 議事 (1)「事業の実施状況」について (2)博物館評価「徳島県立博物館の中期活動目標(案)」について (3)その他 4 閉会 出席者 委員9名(竹原委員欠席),オブザーバー2名(安部 美幸,佐賀 幸代
[いずれも徳島文理大学総合政策学部4年生]) 記 録 事務局 まず,平成15年度の状況について報告する。平成15年度の博物館の入館者数は,81,818人で,前年比で30%増加した。開館以来14年間の順位としては,6番目の入館者数である。 事務局 今回提示した「中期活動目標(案)」により,総合博物館としての使命を明文化し,多様な観点からの博物館評価を行うこととした。この目標は,昨年度に協議会で議論していただいた「徳島県立博物館の活動目標及び評価指標(素案)」をもとにしながら,作成した。 1.レファレンスや講師派遣など,従来は館としての位置づけが曖昧だった活動を,「シンクタンクとしての社会貢献」として明確化する。 2.博物館を有効に活用する利用者が増えるよう「情報の発信と公開」に取り組む。 3.従来は意識としても希薄だった「マネージメント(経営)」をひとつの柱にすえ,評価システムの構築や県民参加の仕組みづくりなどを進める。 表現は可能な限り簡潔にして目標値を設定するとともに,平成14・15年度の活動実績も記載し,評価指標と実績の比較が分かり易くなるよう工夫した。年度末には,評価指標に基づき,活動実績の自己点検・評価を行い,協議会をはじめとした外部の意見・評価を求め,次年度以降の活動計画に反映させたいと考えている。 事務局 昨年度の協議会での委員提案への対応や,「中期活動目標(案)」に掲げた目標の中で,すでに取り組んでいるものについて,状況を説明する。 1.企画展・展示替えを積極化し,PRを強化している。
2.利用者の利便性の向上を図るため「わかりやすい案内表示」に取り組んでいる。 「わかりやすい案内表示」・「展示解説の推進」については,アンケート等では分かりやすいと好評であった。 4.「アウトリーチ等,多様な催しの推進」のため,カルチャーセンターで企画展のPR講座を開催した。受講者は博物館の普及行事に参加した経験のない人達がほとんどだったので,効果があった。 5.徳島文理大学と連携して「大学生にとって求められる博物館像」の調査及びそれに対応した改善に向けた取り組みを進めている。131名の学生に対してアンケートを実施し,100%の回収率であった。博物館のイメージや何を望んでいるかなどの貴重なデータもあるので,新しい顧客の開拓等に向けて有効に活用していきたい。 委 員 県内の旧家が県文化振興財団に寄贈した民俗資料を,県郷土文化会館で展示しているという報道に接した。博物館も同じような活動をしている。同じ県関係機関であり,効率面からも県立博物館で一元管理できないのか。 事務局 博物館資料は継続的収集が重要と考えている。民俗資料は不定形で,大きいものもあるため,納屋を壊すので一括して受入れて欲しい等の要望もあるが,収蔵スペースが不足しており,せっかくの申し出を断らざるをえない現状である。現実的制約からも,一元管理は困難である。 委 員 この「中期活動目標(案)」はよく出来ているが,実行するには財政面の裏付けも欠かせない。設置者に理解してもらう必要がある。 事務局 目標を立てるにあたっては,労働時間や人員,予算などは加味していない。現実的に財政や組織面を加味すると,困難なことが多いのが実情である。今回の活動目標は博物館サイドでまとめたが,協議会に諮った後,教育委員会の各課に説明するなど,機会あるごとに理解を求めたい。 委 員 目標が簡略化されて非常にわかりやすい。アカデミックな博物館がここまでやるのは評価したい。だが,数値目標は知的な文化施設の評価になじまない。あえて数値目標にとらわれない内容を掲げて欲しい。 事務局 数値で評価できない項目は確かにある。だが,数値がつかめるものは出来る限り,数値を入れるようにし,定量的評価と定性的評価をミックスさせ,博物館活動の多様な側面を評価できるようにした。 委 員 前年度の実績値より目標値の方が低いものがあるのはなぜか。意欲が低いのではないか。 事務局 項目によって基準が異なっている。安定的に,最低限クリアしていこうという意味で,過去の実績から平均値的な値をもとに目標を設定した場合がある。したがって,常に数値が上昇するとは限らない。また,資料収集の場合だと,過去の実績を統計学的に分析した結果を踏まえ,収蔵スペースの限界,大型コレクションの受入の可能性等を考慮して増加目標を設定した。 委 員 情報発信の推進についてはホームページのアクセス数が指標になるが,ホームページはどのように作成・充実させているのか。 事務局 文化の森では,データベースや各館情報などのホームページを公開しているが,博物館のホームページへのアクセスが全体の1/4を占めている。トップページを経ずに検索エンジン等を使って,目的ページへ直接アクセスする場合はカウントしていないので,実数はさらに多いものと思われる。 委 員 学校教育との連携では,校長会の機会にパンフレットをもらったが効果は薄い。郡市単位の理科教育部会など,教科ごとの組織へ送ってもらえれば,伝達するし,広報の広がりは確かになる。 委 員 マネージメントについては,経営感覚をとり入れて幅広い活動に取り組む必要があるが,民間人を登用してマネージメントするということか。 事務局 我々職員が経営意識をもって取り組んでいくという意味だ。 委 員 徳島文理大学との連携は,新しい取り組みであり,調査結果も興味深い。詳しい説明を求めたい。 オブザーバー(学生2名)
アンケートのクロス分析を進めている。これまでに明らかになってきたことを,一部だが報告したい。さらに検討して,年内には分析結果を取りまとめる予定だ。 1.博物館が「つまらない」と答えている人数は,行ったことない人が,行ったことのある人の2倍である→「つまらない」との先入観がある。難しそう→「つまらない」のイメージが一部で定着している。 2.県外出身学生で,博物館へ行ったことのある全員が,楽しい・明るいなど良いイメージを持っている。 3.一人で行ったと答えた全員が,良かったという高い評価である。 4.行ったことのある人ほど,参加型イベントを求めているし,その多くが学芸員の解説を求めている→より深い体験と知識を望んでいる。 5.行ったことない人の方が,もっとPRを望んでいる→情報が入ってこない。 6.展示内容の充実を求めている人がとくに多い。 委 員 「指定管理者制度」の導入をはじめとした行政コストの削減が検討される中で,「博物館の中期活動目標(案)」に基づいた活動を進めるということだが,一番大事なことは県民に応援してもらうことである。そのために運営支援組織をどう作っていくか。他県では友の会を母体としたNPO法人が見受けられるが,本県でも取り組み体制の整備を急ぐ必要がある。 事務局 博物館を取り巻く状況が,財政面から厳しくなる一方,生涯学習や学校教育支援,国や県の行政組織,また企業などから博物館活動への様々な要望が増えてきている。そこでNPO法人による運営支援状況について,先進博物館で聞き取り調査を行った。 委 員 NPOを成功させるためには意欲のあるメンバーが必要だが,県民ニーズを理解し,県民に支えてもらう部分を周知することが第一だと思う。NPOの財源については,金融機関から活動支援する制度もあるので上手に活用するようにして欲しい。 事務局 NPOのメンバーについては意欲のある人への働きかけを考えている。またNPOの財源については,会費以外に文部科学省等の委嘱事業や民間の協力を得る仕組みの検討などを考えている。 委 員 幅広い博物館活動ゆえに様々な講師派遣の依頼があると思うが,どの程度自由に行っているのか。また,県立博物館の組織として講師派遣に制限を受ける場合には,例えばNPOでの人材育成を通じた対応などを検討してもよいのではないか。 事務局 学芸員が講師派遣の依頼を受けることは,ある程度理解もされているが,謝金の有無等により,休暇と職務専念義務免除,あるいは出張といった線引きを行うなど,運用面では厳しい対応を行わなくてはならない場合がある。 委 員 中期活動目標をもう少し絞らないと,県立博物館が人的・財政的に苦しむことになり,職員も疲弊するのではないか。こうしたらよいという具体的な案は持っていないが,他の施設とのネットワーク,文化の森の中でのネットワークを活用して,もう少し軽重をつけた役割分担を検討してはどうか。 事務局 総合博物館という立場で,活発な活動に取り組んでいきたいという意思表示の意味も込めて「中期活動目標(案)」を作った。市町村の博物館とは連携を進めているが,県立博物館の役割のスリム化は今のところ難しいと考えている。 委 員 昨年度の「活動目標および評価指標(素案)」の議論を踏まえて,平成16年度からの5年間に推進すべき「中期活動目標(案)」が提示された。協議会としては,この「中期活動目標(案)」に賛同し,バックアップすることといたしたい。 委 員 こんな意見もあるということで聞いて欲しい。理美容業界からは県施設は月曜日が休館で利用できないという不満が寄せられている。月曜日に臨時開館することもあるだろうが,その時には月曜休館への不満のあることを踏まえて開館を強くアピールして欲しい。
●事業の実施状況について(→資料1・2)
平成15年度の常設展観覧者数は39,797人であった。前年度から6.6%の増加となった。また,企画展と特別陳列の観覧者は大幅に増加し,前年度比では72.5%増の34,892人となった。
調査研究事業については,「牟岐大島・出羽島の自然と暮らし」をはじめ,3つの課題調査を行ったほか,個別テーマについての一般調査研究を進めた。
資料購入費は29,880千円を執行し,平成16年3月31日現在の館蔵資料の総数は,合計454,853点である。
普及教育事業として,各種の普及行事(合計67回)を行った。また,学校教育支援事業として,館内での授業8件,出前授業19件,資料貸出9件,職場体験2件,教員研修5件を実施した。 次に,平成16年度の事業概要について報告する。展覧事業では,常設展の展示替えや,企画展3本(「サメの世界」[終了],「エビとカニ」[開催中],「石とくらし」)を開催する。
調査研究事業は,昨年度同様,一般調査研究,課題調査を行う。
資料収集保存事業については,購入費が13,000千円と,減額になっている。
普及教育事業では,79回の普及行事を計画しており,現在までの参加者は1,816人である。●博物館評価「徳島県立博物館の中期活動目標(案)」について(→資料3〜6)
県立博物館の果たすべき機能として,従来の資料収集保存・調査研究・展示・普及教育の4つに加えて,新たに次の3分野を博物館の活動として追加した。
(1)通行車両から常に企画展案内が見えるように,文化の森橋へ横断幕を設置した。
(2)駐車場から博物館への歩道筋に新しいポスター掲示板を設置した。
3.「展示解説の推進」のために始めた常設展ガイドツアーは,今後とも継続して内容の充実を図っていく。
情報発信の後に,情報共有の言葉も加えて欲しい。一方的な発信ではなく,受信者がどのような反応を示したか。共有できた情報から何が生まれるかとの表現があってもよい。地域の勉強会で学芸員に講師を依頼しているが,交通費を出せるような組織ばかりではない。NPO法人の設立を検討されるようだが,旅費や謝金を財源支援して,県民参加の機会を増やして欲しい。他県の博物館のNPO活動について教えて欲しい。
ホームページは業務内でできる範囲として学芸員が作成しているが,数のノルマを設けていないため,分野によっては作成ページ数にばらつきがある。ニュースや展示解説などの出版物等をホームページ化するなど,既存のリソースの活用を図りながら,内容の増加を進めている。
県立の博物館であるがゆえに活動の制約になっている部分を,NPO法人を設立・連携して活動範囲を広げる。県民の多様な要望と県民参加の形,財政要件を検討する必要がある。県民にどの部分の活動を支えてもらうかを明確にし,そのためにはNPOの支援を得ていかに活動するか,どういうNPOが望まれるのか検討することが大事である。NPOが申請者となることで,国の研究費や助成金も受取りが可能となる制度が多々ある。NPO活動の中に,博物館の活動を財政的に支える部分があってもいいのではないか。
大阪市立自然史博物館では,任意団体の友の会が母体となってNPO法人「大阪自然史センター」を設立している。活動はミュージアム・サービス事業をはじめ多岐にわたるが,友の会をNPOの事業組織と位置づけ,その自主性を尊重し発展をサポートしている。
兵庫県立人と自然の博物館では,ボランティアグループが活動の場を館外へと拡げ,より多くの市民を対象に活動を行うためにNPO法人「人と自然の会」を設立している。NPO法人は博物館と対等なパートナー関係を結び,「ひとはくフェスティバル」など多くの自主企画活動を行っていた。
なお,当博物館も,2004年4月に設立された「NPO法人 西日本自然史系博物館ネットワーク」に参加している。このネットワークでは,共同イベントや情報交換,文部科学省をはじめとした国の機関等からの事業受託を行なうこととしている。●その他
[徳島県立博物館協議会のページ] [博物館のトップページ]