採集と道具【情報ボックス】
動物担当 田辺力
子供の時、私はよく昆虫を水そうや洗面器にいれてながめていました。でも、標本を作るということはしませんでした。作りたくても道具がなかったのです。図鑑の後ろのほうには標本作りのための道具が紹介されているのですが、いったいどこにいけば買えるのか、わかりませんでした。それは私が昆虫少年になりきれなかった理由の一つのようにも思えるのです。道具は重要です。
写真1ながぐつなど
私はときどき林や海岸に動物の採集にでかけます。林でおもにとるのはヤスデ、ムカデ、クモ、昆虫で、海岸では、貝、エビ、カニです。採集では、まず、時期と場所の選定が重要ですが、次に大切なのが道具をそろえることです。適当な道具をもってこなかったために、採集効率がガクッと落ちることがあります。私が採集する動物は手のひらサイズより小さなものがほとんどなので、道具もそんなに大がかりなものはいりません。日頃、使っているものから特に愛用しているものをいくつか紹介しましょう。
長ぐつ
最初にあげるのはやっぱりこれです。私は採集する時はほとんど長ぐつをはきます。使う前は少し抵抗があったのですが、いったん使い始めた後はずっと使っています。海岸で貝などを採集するときはもちろん、林の中を歩きまわるのにも便利です。登山道を歩くのならともかく、いったん林の中にはいると、足が落葉に埋まってしまい、たけの短い靴では土が靴の中にはいってきます。また、落ちた木の枝や落葉でかくれた石などが足首にあたります。こんな時、長ぐつなら土がはいることもないし、枝などで足首をけがすることも減ります。蒸れそうな気もしますが、真夏でもそれほど蒸れません。私はすべりにくい生ゴム底のものを使っています(写真1)。
作業着
ポケットがたくさんついていて採集向きです。値段もそれほど高くなく、上下でも6000円もあれば買えます。
フィルムケース
陸貝研究者の方が採集の時に採った貝を入れるのに使っています。片手でふたの開け閉めができるので、とった動物をすばやく入れることができます。廃品利用の一例です(写真2)。
軍手
安いし、やっぱりこれです。
小型くまで
貝ほりや、林の中で落葉の中の動物を採るのに使います(写真1)。手で落葉をかきわけていたのでは痛くてたまりません。
次の3つのものは、ふつうのスーパーでは購入できませんが、理科教材店か医療科学系の業者を通じて入手することができます。
ピンセット
陸上では、長さ18cm (ケニス、コードNo.345‐344、320円)、海岸では30cm (コードNo.345-346、1280円)を使っています(写真1)。この2種類でほとんど事がたりる感じです。
もともとは遠心分離する時の道具です。フタはねじ式で、きっちりしまるので、中に液体をいれることもできます。私はよくアルコールを入れてもっていき、採ったらかたっぱしからほうりこんでいます。また、脱脂綿を奥の方につめて、酢酸エチルを流しこめば、昆虫採集で使う毒びんになります。メーカーもサイズもいろいろありますが、私はCORNING社のコードNo.25331(外径29mm、長さ115mm、10個単位で750円)のものを使っています。(写真2)
写真2 遠沈管など
広口T型びん
標本びんとして使います。アルコールの液浸標本をつくるには密閉できるびんが必要になります。塩ビ製なので落してもわれません。サイズと値段は次のとおり:300ml、145円;500ml、205円;1l, 255円; 2l, 630円; 3l, 1050円