博物館ニューストップページ博物館ニュース127(2022年6月15日発行)Q.日本地質学会が、徳島県の岩石として「青色片岩・・(127号QandA)

Q.日本地質学会が、徳島県の岩石として「青色片岩(せいしょくへんがん)」という石を選定したそうですが、これって「阿波の青石」と同じものですか?【レファレンスQ&A】

地学担当 中尾賢一

図1 青色片岩(徳島市眉山産)。

図1 青色片岩(徳島市眉山産)


日本地質学会は、2016年5月に全国47都道府県のそれぞれで、「県の石」(県の岩石、県の鉱物、県の化石)を1点ずつ選定しました。徳島県で県の岩石として選ばれたのが青色片岩です。この質問には一言ではなかなか答えにくいのですが、あえて言い切ってしまえば、地質学(とくに変成岩岩石学)では、ふつうの緑色の「阿波の青石」(以下、青石)と「青色片岩」は別な種類の岩石として区別します。

では、「青色片岩」も「青石」のひとつ、と言っても間違いではありません。しかし、現在では「青石」は緑色片岩(りょくしょくへんんがん)という別な結晶片岩にほぼ限定して使われることが多いようです。
青色片岩は別名を藍閃石片岩(らんせんせきへんがん)ともいい、藍閃石という濃青色の鉱物を多く含んで全体的に青みを帯びた結晶片岩です。地下20~40kmという深い場所のわりには、温度が300~500℃という低温の変成作用(へんせいさよう)を受けてできたことが分かっています。代表的な産地は、徳島市の眉山(びざん)と吉野川市の高越山(こうえつさん)です。いっぽう緑色片岩は、緑泥石(りょくでいせき)や緑簾石(りょくれんせき、アクチノ閃石(せんせき)などの緑色をした鉱物を多く含んでおり、全体的に緑色を帯びています。地下およそ10~25km、300~500℃の変成作用を受けています。この岩石も眉山から産出し、県内では建築材や庭石としてよく見かけます。

青色片岩と緑色片岩は、ともにもともと玄武岩(げんぶがん)質の岩石だったのですが、青色片岩の方が、プレートの沈み込み域で、より深く沈み込んだということがわかっています。このような特徴があり、徳島県に特に多産することから「徳島県の岩石」に選定されたようです。

図2 図1の標本の産地。岩石の表面が風化して黄色くなっ ている。

図2 図1の標本の産地。岩石の表面が風化して黄色くなっている。

 

図3 藍閃石の大型結晶(吉野川市高越山産)。青みを帯びた黒っぽく細長い結晶。

図3 藍閃石の大型結晶(吉野川市高越山産)。青みを帯びた黒っぽく細長い結晶。

 

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