なぜ日本から恐竜化石は見つかりにくいのですか?【レファレンスQandA】
地学担当 小布施彰太
日本の恐竜化石は、近年では全国各地から見つかり、新しい成果が毎年報じられています。大きく進歩してきている日本の恐竜研究ですが、まだその産地は限られ、恐竜化石の発見は簡単なことではありません。
まず、化石自体が地面を掘ればすぐ見つかるものではありません。地球の表面を覆う岩石には、マグマが冷え固まった火成岩、泥や砂などの堆積物が固まった堆積岩、そしてそれらが熱・圧力の影響で変化した変成岩があります。化石は、生き物の遺骸や痕跡が堆積岩の中に残されたものであり、火成岩や変成岩を探しても化石は見つかりません。さらに、化石を見つけるには、その生き物が生きていた時代・環境で作られた地層を探す必要があります。恐竜化石の場合は、中生代の陸地で堆積した地層(まれに海の地層)に含まれ、この時点で産地は限られます(図1)。
図1 日本に分布する中生代の堆積岩(灰色)と恐竜の骨化石産地(赤点)(柴田ほか,2017を一部改変)
そして、日本において化石が見つかりにくい原因となっているのが、地層の露出が少ないということです。日本列島の地形は起伏に富み、その面積のほとんどを山地が占めています。さらに地表は豊かな植生に覆われ、岩肌を直に観察できる場所は限られます(図2)。海外の有名な恐竜化石産地は多くが草木の生えない地域であり、それらと比べると日本の産地は地層の露出が圧倒的に少ないのです。
図2 徳島県勝浦町の恐竜化石産地
これは見つけにくいというだけで、化石が出ないということではありません。研究者やアマチュアの人たちによる入念な調査によって、日本の恐竜化石は発見されてきました。これからもさらに多くの場所で、新たな発見が続いていくかもしれません。
<引用文献>
柴田正輝・尤海魯・東洋一,2017.日本の恐竜研究はどこまできたのか?:東・東南アジアの前期白亜紀フォーナの比較.化石,101,23–41.