家に出るクモの名前は何というのでしょうか?【レファレンスQandA】
動物担当:鈴木佑弥
クモの研究をしていると、多くの方からこのような質問を受けます。実際に、私たちの家の中には5から10種類ほどのクモが棲すんでいるといわれています。これらのクモは偶然部屋の中に迷い込んだかのように思われるかもしれませんが、実はその多くは、野外よりも家の中に多く生息する「屋内性」のクモなのです。
家に出るクモは大きく分けて2タイプあります。ひとつは、壁や家具の上などをぴょんぴょんと跳びはねている小さなクモ。これはハエトリグモとよばれるクモの仲間で、太く短い脚と大きな眼が特徴的です。ハエトリグモは網を張らないかわりに、大きな眼でハエなどの獲え物ものを見つけ、ジャンプして捕とらえます。ハエトリグモの仲間は日本国内だけで100種類以上が知られていますが、その中でも家の中で出合うことが多いのは、ミスジハエトリ(図1)、アダンソンハエトリ、チャスジハエトリの3種類です。3種類とも大きさは似ていますが、色や模様によって見分けることができます。
図1 ミスジハエトリのオス(徳島市) 左:頭の赤い毛と背中の黒いストライプが特徴的。下:頭の正面に、4個の大きな眼が並ぶ。
もうひとつは、脚が長く動きの素早い、大人の手のひらほどの大きなクモ。その名もアシダカグモです(図2)。アシダカグモは体だけで3cm、脚も含めると10cmを超える大きなクモで、寝室の天井やトイレの壁に張り付いているところに出くわすと、思わず、ぎょっとしてしまいます。そんなアシダカグモは、実はゴキブリをよく食べるクモとして知られています。また、見た目に反して臆病(おくびょう)なため、こちらから刺激(しげき)しない限りは危害を加えてくることはありません。アシダカグモは暖かい地域に多いので、東北や北海道では見ることができませんが、幸か不幸か徳島ではたくさん見られます。
ハエトリグモやアシダカグモのほかにも、家の中にはさまざまなクモがいます。さて、あなたの家にはどんな種類のクモがいるでしょうか?自由研究のテーマにもおすすめです。
図2 アシダカグモのオス(徳島市)オスの背中には大きな黒い模様があるが、メスにはない。素手でつかまえようとすると、咬かまれることがある。(写真のクモは左後うしろ脚あしが一本欠けている)
参考文献
小野展嗣.( 2002) クモ学-摩訶不思議な八本足の世界- . 東海大学出版会. 224pp.