土器・陶磁器について

徳島県立博物館では、様々な考古資料がみられるかと思います。考古資料の中でも、とりわけ量が多いのが土器や陶磁器、いわゆるやきものです。当館では常設展の「3.先史・古代の徳島」や「4.中世の徳島」のコーナーでみることができます。

土器・陶磁器は簡単にいえば、昔の人が使ったお皿やお椀、お鍋などといった道具のことです。現在でもお皿やお椀には陶器や磁器のものも多いですし、土鍋なんかも冬に鍋料理で使っているご家庭も多いのではないでしょうか。

現在、当館で展示されている土器・陶磁器は、縄文土器からはじまり、弥生土器、土師器(土師質土器)、須恵器(東播系・備前産含む)、常滑焼、瓦器、瓦質土器、瀬戸美濃焼、白磁、青磁、青花のような順でおよそみることができると思います。

また、用途も様々で、ご飯やおかず、飲み物を入れる供膳具(皿・坏・碗など)、水などをためておく貯蔵具(壺・甕など)、煮たり焼いたりするための調理具(鍋・甕など)といったように、いろいろな器種がつくられています。

これらの細かな説明はいずれ考古小咄でできたらなと思います。

土器・陶磁器は一般に、原料や焼成温度、釉の有無などから、土器、陶器、炻器、磁器の4種類に区分されます。内容は以下の図の通りです。

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図 土器・陶磁器の種類(野上2021を参考に作成)

見本の写真は当館展示資料なので、来館された際は探してみてください。(写真が下手ですいません...)

ただ、陶器と炻器は区分することが難しいため、陶器の一種としてみることも多いです。なのでここでは、陶器と炻器は陶器として紹介したいと思います。

では、当館展示の土器・陶磁器はどれに当てはまるか、確認してみましょう。

1. 土器:縄文土器・弥生土器・土師器(土師質土器)・瓦器・瓦質土器

2万年~1万6500万年前に誕生した人類最古のやきものです。縄文土器や弥生土器は焚き火に土器を入れて焼いたような野焼きで焼かれましたが、時代が下ると窯で焼かれることも多くなります。瓦器や瓦質土器は土器の表面に炭素を吸着させて、水を通しづらくしたものです。

土師質のやきものは、今でも植木鉢や、神社などで神酒を受ける素焼盃にみられます。

2. 陶器(炻器含む):須恵器・常滑焼・瀬戸美濃(*1)

陶器は瀬戸美濃焼のように釉薬をかけるのが一般的です。釉薬とは陶磁器を覆うガラス質のもので、陶磁器の強度や耐水性を高めてくれます。

須恵器は5世紀の初め頃に朝鮮半島より持ち込まれ、日本でも生産が開始された炻器です。登り窯という丘陵斜面の傾斜を利用した窯で焼かれたものが多いです。

常滑焼は陶器か炻器か迷うような判断の難しいやきものの1つです。中世の愛知県でつくられたやきものですが、技術としては古代から続く陶器の技術を引き継いで焼かれているのですが、釉薬はかけられていません。

*1 展示品は中世の瀬戸美濃焼で陶器ですが、近世になると磁器のもの焼かれています。

3. 磁器:白磁・青磁・青花

土器や陶器、炻器が粘土を原料としているのに対して、磁器は陶石などを原料としています。白磁や青磁はそれぞれ透明、青色の釉薬をかけて焼いているのに対し、青花は藍色の顔料で模様を描いた後に、透明な釉薬をかけて焼いています。

少し専門的なことも話してて難しかったかもしれませんが、少しでもみなさんの勉強の助けになれば幸いです。また、わからないことがございましたら、学芸員におたずねくだされば、お答えできることもあるかと存じます。

【参考文献】

浅野晴樹2020 『中世考古〈やきもの〉ガイドブック 中世やきものの世界』新泉社

野上健紀2021『陶磁考古学入門 やきもののグローバルヒストリー』勁草書房