くん蒸室【探険!! 博物館】

著者名 魚島純一

博物館に持ち込まれる資料にはさまざまなものがあり、なかには虫に食われてしまっていたり、力ビがはえたりしているものもあります。

虫や力ビがついた資料をそのまま展示室や収蔵庫に運び込むと、ほかの資料に虫や力ビが広がり、大切な資料が壊れたり、汚れたりしてしまいます。そのため、資料を展示室や収蔵庫に運び込む前には、必ずくん蒸(じょう)という作業をおこないます。くん蒸とは、ガスなどで資料についているカビなどの菌や虫を殺すことです。
博物館にはくん蒸室という部屋があり、減圧(げんあつ)くん蒸装置と、大型資料用のくん蒸庫があります。
減圧くん蒸装置では、資料を入れ、時間を設定するだけでくん蒸を自動的におこなうことができます。ふつう、資料の材質を傷つけることのない文化財くん蒸用ガスを用いて、1日から3日間くらいくん蒸します。これで表面についた虫や力ビはもちろん、資料の内部にかくれている虫や幼虫、卵も殺すことができます。減圧くん蒸装置に入る資料の大きさには制限があるので、それ以上の大きなものは、くん蒸庫と時ばれる部屋を使ってくん蒸します(図1)。

図1 大型資料のくん蒸作業

図1 大型資料のくん蒸作業

 

資料につく害虫は、昆虫標本や動物の剥製(はくせい)などを好んで食べる力ツオブシムシのなかまや、農具や本を食害するキクイムシ類やシバンムシのなかま、シミなど多種多様です(図2)。また、力ビは資料を汚すばかりでなく、材質までも痛めてしまいます(図3)。

図2 紙の害虫として知られるシミ

図2 紙の害虫として知られるシミ

 

図3 食害された巻物

図3 食害された巻物

このような虫や力ビとの闘いは、博物館学芸員の大切な仕事のひとつです。貴重な資料を保存するために、博物館では今日もまたくん蒸をしています。

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