博物館ニューストップページ博物館ニュース012(1993年10月9日発行)展示室の見えない工夫(012号探検!!博物館)

展示室の見えない工夫【探険!! 博物館-】

魚島純一

展示は“博物館の顔”と言われています。展示室(図1)はすでに何度も見学した人もいることと思いますが、今回は展示室にある資料を保存するための工夫についてお話しします。

図 1 博物館総合展示室(「古代・中世の阿波」のコーナー)

図 1 博物館総合展示室(「古代・中世の阿波」のコーナー)

 

博物館では、いつも資料の保存ということを考えています。保存だけを考えれば、資料を収蔵庫に保管して一切外に出さなければよいのですが、一人でも多くの人に貴重な資料を見てもらうこともまた博物館の仕事のひとつです。そこで、資料を痛めないように展示するために、いろいろな工夫がされています。
まず、展示室には休憩コーナーなどをのぞいて窓がありません。日光に含まれた紫外線によって貴重な資料が日焼けしたり、痛んだりするのを防ぐためです。紫外線は蛍光灯にも含まれているため、展示室の照明には紫外線をカットした特別な蛍光灯を使っています。

一見しただけではまったくわかりませんが、展示室の壁はすべて二重になっています。そのため、展示室内の資料は、外の温度や湿度の変化に対して影響を受けにくくなっています。
展示資料の中には、たいへんデリケートなものもあり、このような資料を展示するケースには「エアタイトケース」と呼ばれる密閉ケースを使います。このケースに調湿剤という湿度を一定に保つための薬剤を入れて密閉すると、まわりの湿度が変化しても、長い間ケース内の湿度を一定に保つことができます。銅鐸のコナー(図2)、人形頭のコーナーに使われているケースがそれです。エアタイトケース内の湿度は、資料の材質などによってそれぞれ最適な湿度に設定されています。

図 2 銅鐸のコーナーに使われているエアタイトケース

図 2 銅鐸のコーナーに使われているエアタイトケース


このように博物館では、貴重な資料を保存するために、見えない部分にもさまざまな工夫かされているのです。

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