博物館ニューストップページ博物館ニュース012(1993年10月9日発行)Q.二ホンカワウソは本当にいるのでしょうか?(012号QandA)

Q.二ホンカワウソは本当にいるのでしょうか?【レファレンスQ&A】

動物担当 佐藤陽一

A.昨年の10月、高知県佐賀町で二ホン力ワウソの生存が確認されたと報道されました。もう絶滅したのではないかと思われていた矢先なので、このニュースを聞いて喜んだ人も多いのではないでしょうか。ちょうど同じ頃、徳島県でも二ホンカワウソかもしれないという目撃例があり、注目を集めました。

ただ、残念なことに、高知県での生息確認は、糞や足跡、体毛などの、有力ではあるけれども間接的な証拠によるものです。多くの調査員の方たちの努力にもかかわらず、いまだに生きている姿の写真やビデオは撮影されていません。いっぽう徳島県では、生息の確実な証拠は、まだ得られていません。生息しているかいないかを確認することは意外と難しいのです。なぜでしょうか。

それは、ニホンカワウソが人の目にふれにくい山や川にすんでおり、しかもたいへん用心深い習性をしているからです。しかし、一番の原因は、もはや簡単に見つかるほど多くはないということです。高知県ではせいぜい数頭が生息しているにすぎないと予想されています。

こんなにも数の減ってしまった二ホン力ワウソですが、かつては北海道から九州まで広く分布していました。数が減った原因としては、毛皮を取るために乱獲したことがあげられます。これに、河川の改修や大規模な植林などによる生息環境の消失が追い打ちをかけました。

どんな生物でも、その種にとって適した環境があるから生存できるので、単に狩猟を禁止しただけでは十分ではありません。ある生物を保護するには、その生息環境といっしょに保護する必要があります。ところが二ホンカワウソの場合、もはや好適な環境がほとんど残っていませんし、自然繁殖するには個体数があまりにも少なすぎるので、絶滅は時間の問題かもしれません。

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