博物館ニューストップページ博物館ニュース013(1994年1月10日発行)蛍光X線分析装置(013号探検!!博物館)

蛍光X線分析装置【探険!! 博物館】

魚島純一

遺跡などから出土した遺物は、必要に応じてさび取りや樹脂含浸などの保容処理が施され、展示や調査研究の材料となります。保存処理は、破損状況や材質によってさまざまな方法を使い分けるため、処理の前に内部のようすや材質を調べる必要があります。しかし、文化財を壊したり傷つけたりすることはできないので、壊さずにすむ方法で調査しなければなりません。

文化財を壊さずにその材質を調べるためには蛍光X線分析装置(けいこうエックスせんぶんせきそうち)(図1)を使います。蛍光X線分析というのは、物質にX線をあてると元素ごとに特有の二次X線(蛍光X線)が発生することを利用して、元素の種類と量を調べる方法です。この装置は、ふつうはごく小さなものしか分析できないのですが、博物館では大きな文化財を壊さずに分析できるようにするため特別に開発したものを使っています。

図1 大型文化財も分析できる蛍光X線分析装置

図1 大型文化財も分析できる蛍光X線分析装置

この蛍光X線分析装置を使って阿南市山口町から出土したと伝えられる長者ヶ原(ちょうじゃがはら)1号銅鐸(どうたく)(図2)の材質を調べてみた結果が図3です。この図で山のように高くなった部分が検出された蛍光X線を示し、この位置を調べることで元素の種類を知ることができます。

図2 長者ケ原1号銅鐸

図2 長者ケ原1号銅鐸

 

図3 長者ケ原1号銅鐸の分析結果

図3 長者ケ原1号銅鐸の分析結果

この結果から、銅鐸は銅(どう)、錫(すず)、鉛(なまり)を混ぜ合わせた青銅(せいどう)という金属でつくられていること、表面のところどころに付いた赤茶色の顔料は辰砂(しんしゃ)とベンガラを含むものであることなどがわかりました。

このように、この装置を使うと文化財を傷つけることなく保存処理や調査研究のための貴重なデータを得ることができるのです。なお、この銅鐸は総合展示室の銅鐸のコーナーに展示されていますので、一度じっくりと観察してみてください。

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