博物館ニューストップページ博物館ニュース014(1994年4月10日発行)南アメリカの哺乳動物化石(014号館蔵品紹介)

南アメリカの哺乳動物化石【館蔵品紹介】

地学担当 両角芳郎

博物館には、ラプラタ記会ホールという小さな展示室があります。「徳島県とアルゼンチン共和国ラプラタ国立大学との相互贈与に関する合意書」に基づいてラブラタ大学から寄贈された、南アメリ力の哺乳動物化石を展示することにより、生物進化や日本と世界との関わりについて考えていただこうという目的で作られた部屋です。

ラプラタ記会ホール

南アメリ力大陸は、第三紀のほとんどをつうじて、“島大陸”の状態にあったため、他の大陸ではみられないさまざまな独特の哺乳動物が進化しました。メガテリウムやパノクツス(貧歯(ひんし)類)、マクラウケ二ア(滑距(かっきょ)類)、トクソドン(南蹄(なんてい)類)などです。ビーグル号の航海で南アメリ力を訪れた若き日のダーウィンは、マクラウケ二アやトクソドンの化石を発掘し、生物進化の考えについての大きなヒントを得たといわれています。

第三紀の終わり(約300万年前)にパナマ陸橋ができ、南アメリカ大陸が北アメリ力大陸と陸つづきになると、北から南へ多くの動物が移住しました。スミロドン(ネコのなかま)やヒッピデイオン(ウマのなかま)、ステゴマストドン(ゾウのなかま)はその代表です。それらの動物は、似たような生態的地位を占めていた南アメリ力原住の動物を次第に滅ぼし、あるいは生活空間を分けあってすむようになりました。現在南アメリ力にすんでいる哺乳類の約半分の層が、北からの移住者およびそれから発展したグループで占められているということです。

新しいラプラタ記念ホールの展示資料

(1)メガテリウム全身骨格(レプリカ)(貧歯目)
(2)パノクツス全身骨格(レプリカ)(貧歯目)
(3)パノクツス甲羅(貧歯目)
(4)パノクツス原寸大復元模型
(5)スクレロカリプツス頭骨、甲羅、尾骨(貧歯目)
(6)トクソドン全身骨格(レプリカ)(南蹄目)
(7)マフラウケ二ア全身骨格(レプリカ)(滑距目)
(8)マクラウケ二ア縮小復元模型
(9)スミロドン全身骨格(レプリカ)(食肉目)
(10)ヒッピディオン全身骨格(レプリカ)(奇蹄目)
(11)ステゴマストドン頭骨(レプリカ)(長鼻目)
(12)ステゴマストドン縮小復元模型
註:(1)~(5):旧展示から引き継いだ資料
(6)~(11) :第3回贈与資料
(12):新しく製作した資料


このたび博物館では、これまでの展示資料に加え、1993年3月の第3回(最終)贈与資料を新たに組み入れるため、ラプラタ記念ホールの展示替えを行いました。それによって、南アメリ力の踊乳動物相をつくる代表的なグループの化石がほぼそろったことになり、全島骨格がずらりと並んで壮観な、いっそう充実した展示に生まれ変わりました。これだけまとまった南アメリ力の古脊椎動物資料が見られるのは、わが国では徳島だけで、当館の語りうるコレクションとして各方面から注目されています。

カテゴリー

ページトップに戻る