博物館ニューストップページ博物館ニュース031(1998年6月25日発行)卵を守るヤエヤマムラサキのメス(石垣島、荒川)(031号表紙)

卵を守るヤエヤマムラサキのメス(石垣島、荒川)

動物担当 大原賢二

卵を守るヤエヤマムラサキのメス

 

今から30年近く前、沖縄県の八重山(やえやま)諸島の石垣島から、メスが卵を守るチョウがいるという衝撃的な報告がありました。それがこのヤエヤマムラサキです。母チョウはイラクサ科のオオイワガネという植物の葉裏に、多い時は数百個の卵をまとめて産み、その上に静止して、卵が孵化(ふか)するまでそこにとどまり、幼虫が無事に孵(かえ)ると、母親は死んでしまうという驚くべき生活をしていたのです。日本のチョウの中で、このような卵の保護をする種は、ほかには知られていません。

これはアリの捕食や寄生蜂などから卵を守るためであると考えられます。アリが近づくと、母チョウはハネを勢いよく開いて、あたかもハネでアリをたたきとばすかのような行動をします。アリだけでなく、近づく者には同様の高度をとり、追い払ってしまいます。

しかし、母チョウが鳥やキノボリトカゲなどに襲われてしまうこともあるようで、母チョウのいない卵塊も見られます。このような卵は幼虫になれるようですが、アリなどに襲われて全滅してしまう場合が多いようです。

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