博物館ニューストップページ博物館ニュース130(2023年3月25日発行)イズモユキノアシタ(130号 館蔵品紹介)

イズモユキノアシタ【館蔵品紹介】

地学担当 中尾賢一

 高知県安田町唐浜(図1)に分布する新第三紀鮮新世の地層(唐ノ浜層群穴内層)から、イズモユキノアシタ(イズモノアシタガイ)Cultellus izumoensisという二枚貝化石の産出を確認し、当館の研究報告で他の貝化石と併せて報告しました。ここでは、この貝について解説します。

 図1 化石産地の位置(地理院地図に加筆)

図1 化石産地の位置(地理院地図に加筆)

 

 イズモユキノアシタは絶滅種で、マテガイ類に似た、横に細長い形の二枚貝です(図2)。新生代古第三紀漸新世後期(約3000万年前)の北九州周辺の地層から産出する化石が最古記録で、新生代新第三紀中新世(約2300万年前~ 500万年前)に東北地方や北海道まで分布を広げ、各地で多産します。その後の鮮新世(約500万年前~258万年前)の地層からは、神奈川県や茨城県で報告があります。東京都の多摩丘陵に分布する第四紀更新世前期の地層(約130万年前)からは比較的多産するようです。これがおそらく最後の化石記録となります。

図2 穴内層産イズモユキノアシタ

図2 穴内層産イズモユキノアシタ


 当館は、本種と同定できる穴内層産の化石を4点収蔵しています。うち1点は詳しい産出場所は不明ですが、残り3点は、1990年代から2010年頃に行われた農道敷設工事に伴って産出したと考えられる個体です。うち産出層準が明確な1個体は、鮮新世最末期(約260万年前)の層準から産出しました(図3)。

図3 イズモユキノアシタ化石の産状(図2と同じ個体)

図3 イズモユキノアシタ化石の産状(図2と同じ個体)


 化石が産出する場所・時代を調べていくことで、その分布の移り変わりを追うことができます。イズモユキノアシタは、漸新世後期に現れ、中新世に繁栄し分布を広げ、鮮新世には生息域や個体数を減らして高知県や関東地方で生き残り、130万年前の関東地方で一時的・局地的に繁栄し、その後すぐに絶滅したようです。

<引用文献>
三本健二・中尾賢一.2023.高知県の鮮新-更新統唐ノ浜層群穴内層から新たに確認された貝類(10),徳島県立博物館研究報告,(33).

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