博物館ニューストップページ博物館ニュース131(2023年6月15日発行)ドイツ・フンスリュック粘板岩の化石の寄贈について(131号 情報ボックス)

ドイツ・フンスリュック粘板岩の化石の寄贈について(131号 情報ボックス)

地学担当 辻野泰之

 徳島県立博物館常設展示室の地球セクションにある「古生代の生物」の展示コーナーには、黒色で板状の岩石に入った三葉虫やヒトデ類の化石が展示されています(図1)。これは、ドイツ西部のモーゼル地方に分布するデボン紀前期(約4億年前)のフンスリュック粘板岩とよばれる地層から産出した化石です(図2)。粘板岩は、圧力や熱によって、泥岩が弱く変成した岩石で、一般的な泥岩よりも硬く、また、薄く剥がれるという特性を持ちます。そのため、ヨーロッパでは、屋根を葺く石材などとして、古くはローマ時代から利用されてきました。しかし、近年では、合板や安価な石材の導入などにより、フンスリュック粘板岩の需要が落ち込み、現在では、石材としての採掘は行われていないようです。化石の発見には、粘板岩の採掘が必須であったため、現在では、新たな化石の発見が難しい状況になってきています。

図1 常設展示室に展示されているフンスリュック粘板岩の化石

図1 常設展示室に展示されているフンスリュック粘板岩の化石

図2 ドイツ西部のモーゼル地方に分布するフンスリュック粘板岩
図2 ドイツ西部のモーゼル地方に分布するフンスリュック粘板岩


 この産地の化石は、三葉虫の付属肢やヒトデ類の軟組織など、一般的に化石として残りにくい部位が保存されており、デボン紀前期の動物相を知る上で、貴重な情報をもたらしてくれます。

 2023年3月、名古屋市在住の化石愛好家の水野吉昭氏からフンスリュック粘板岩の化石78点が、当館に寄贈されました(図3,4)。水野氏は、全国的にも有名な化石愛好家団体である東海化石研究会で運営委員長を務められた方で、以前も、当館に徳島県那賀町産の化石を多数ご寄贈いただきました。また、2006年夏に開催された当館企画展「奇跡の化石たち」において、水野氏から化石資料を借用したこともあります。これまでの当館とのご縁から今回の寄贈に至りました。今後、これらの資料は、研究や展示、教育普及等に活用する予定です。

 

図3 珪質海綿(Protospongia rhenana)の化石

図3 珪質海綿(Protospongia rhenana)の化石

図4 ウミユリ類(Imitatocrinus sp.)の化石

図4 ウミユリ類(Imitatocrinus sp.)の化石

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