博物館ニューストップページ博物館ニュース132(2023年9月15日発行)恐竜時代の子ガメの化石(132号 収蔵品紹介)

恐竜時代の子ガメの化石【収蔵品紹介】

地学担当:小布施彰太

徳島県立博物館が勝浦町で行っている恐竜化石含有層発掘調査により、物部川層群立川層とよばれる約1億3000万年前(白亜紀前期)の地層からは恐竜を含む様々な動植物化石が発見されています。近年、その発掘調査の中で興味深い化石が発見されたのでここで紹介します。

写真の握りこぶし大の岩石の表面には、大きさ1cmほどのカメ類の甲羅化石が見えています(図1)。カメ類の甲羅化石は発掘調査において数多く発見され、それほど珍しくないのですが、この岩石はそれ以外にも小さな骨の断面が表面にたくさん見えていました。調査で見つかった化石は、母岩(化石の周りの岩石)を削って取り出す作業を行うのですが、この化石は小さく繊細で、物理的に化石を取りだすのが困難でした。そこで、共同で調査を行っている福井県立恐竜博物館に化石を持っていき、「CTスキャン」という、岩石にX線を当て、壊すことなく内部を調べる方法で調べました。すると岩石の内部には、表面には見えていなかった甲羅のパーツや、頭や首などの骨が密集して含まれていました(図2)。
特に図中に示しているV字型の骨は「歯骨」という下あごを形成する骨で、非常に良く保存されています。これらは部位として重複するものが無く、大きさも揃っているため、同じ個体に由来すると考えられます。また、そのサイズからおそらく幼体(子ども)のカメ類であると思われます。
日本で見つかるカメ類化石で、同一個体による頭骨と甲羅が一緒に発見される例はとても珍しく、学術的にも大変重要です。このカメ類化石については、今後詳しく調査を行っていく予定です。また、このような化石が見つかるということは、小さい動物の遺骸が、まとまって化石になるような環境が、当時の勝浦町にあったということでもあります。今後、カメ以外の動物、もしかしたら小型の恐竜などの化石も見つかるかもしれません。

図1 化石を含む岩石(黄色点線内に甲羅化石が見えている)
図1 化石を含む岩石(黄色点線内に甲羅化石が見えている)

図2 密集したカメ類化石

図2 密集したカメ類化石

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