博物館ニューストップページ博物館ニュース133(2023年12月1日発行)昔から人形頭のからくりには金属が使われていたのですか?(133号 QandA)

昔から人形頭のからくりには金属が使われていたのですか?(133号 QandA)

民俗担当 庄武憲子

 先日、来館者の方から「展示している人形頭のからくり模型(図1)には金属が使用されていますが、昔から人形頭のからくりには金属が使われていたのですか?」とのご質問を受けました。

図1 人形頭からくり模型 人形恒作(当館蔵)

(図1 人形頭からくり模型 人形恒作(当館蔵)平成11年(1999)に製作された模型。眉を上下に動かすからくり3ケ所に金属が使用されている。)

 当館には、人形頭のからくりを確認することのできる実物資料は収蔵されておらず、私自身不勉強で、実際にどうなっているのかを見たことがありませんでした。そこで至急調べてみることにしました。
徳島県内で阿波木偶(あわでこ)に関係する資料を最も多く展示公開している「人形のムラ」阿波木偶文化資料館に問い合わせをしたところ、からくりを確認できる実物資料を同館で展示しているとのことでしたので、閲覧、撮影をさせていただきました。


 実物資料(図2)は、「別師頭(べっしがしら)」に分類される人形頭の内部で、「天狗屋/三十八才」「明治廿九(にじゅうきゅう)年/六月吉日」の墨書が見え、阿波の代表的な人形師(人形を作る人)、初代天狗久(てんぐひさ)(1858~1943)の手によるものとわかります。そしてからくりを見ると、当館で展示している模型と同様、「アオチ眉」という眉を上下に動かすためのからくり部分に金属が使われているのを確認することができます。少なくとも明治29年(1896)には、人形頭のからくりに金属が使用されていた証拠となります。

図2 別師頭 初代天狗久作(「人形のムラ」阿波木偶文化資料館蔵) 明治29年(1896)の墨書がある。図1と同様に、眉を動かすからくり3ケ所に金属が使用されている。

(図2 別師頭 初代天狗久作(「人形のムラ」阿波木偶文化資料館蔵)明治29年(1896)の墨書がある。図1と同様に、眉を動かすからくり3ケ所に金属が使用されている。)

 また、初代天狗久の師匠とされる人形富(にんぎょうとみ)(1815~1894)の作品と考えられる、人形頭の内部ものぞかせていただきました。この頭にも、眉のからくり部分に金属が使われているのを見ることができました(図3)。

図3 人形富の作品と考えられる人形頭の内部(「人形のムラ」阿波木偶文化資料館蔵) 矢印の部分に金属が見える。

(図3 人形富の作品と考えられる人形頭の内部(「人形のムラ」阿波木偶文化資料館蔵)矢印の部分に金属が見える。)

 以上から「阿波の人形頭のからくりには、少なくとも1800年代後半には金属が使われていた」とお答えすることができそうです。ただし、それ以前については、まだ実物を確認していないのでわかりません。 

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