博物館ニューストップページ博物館ニュース134(2024年3月25日発行)かつて日本にいたワニ(134号情報ボックス)

かつて日本にいたワニ【情報BOX】

地学担当:小布施彰太

 みなさんは、日本でワニを見たことがありますか?動物園などで見る機会はあっても、野生のワニを見ることはないと思います。日本は気温が低く、ワニが生活するのに適した気候ではないからです。しかし人類の歴史より古い時代では、かつての日本にもワニの仲間(ワニ形けい類るい)が生息していました。特に有名なものとして、大阪府の新生代(しんせいだい)の地層(約40万年前)から発見されたマチカネワニの化石などが挙げられますが、今回は爬虫類(はちゅうるい)の全盛期である中生代(ちゅうせいだい:(約2億5000万年前から約6600万年前まで)に焦点を当てたいと思います。
中生代は爬虫類が非常に多様化した時代で、ワニ形類が出現したのもこの時代になります。当時の日本は、アジア大陸の端に位置しており、日本海がまだできておらず、今のような列島ではありませんでした。
 日本で見つかる中生代のワニ形類化石は、ほとんどが遊離歯(ゆうりし:顎(あご)から抜け落ちた歯)など断片的
なものであり、分類などの詳しい研究はまだ数が限られています。その中で福井県では、長年にわたる恐竜化石発掘調査によって多くのワニ形類化石が発見されています。膨大な数の遊離歯と、頭骨(とうこつ)などの骨化石も発見されており、ゴニオフォリス類というグループに属することが明らかにされています(図1)。ゴニオフォリス類は、今は絶滅していますが、ジュラ紀から白亜紀(はくあき)にかけて北アメリカやアジア、ヨーロッパに広く分布していました。福井県の標本は、このグループの進化の歴史を明らかにする上で非常に重要であると考えられます。

図1 福井県勝山市で発見されたゴニオフォリス類化石(中生代前期白亜紀)(福井県立恐竜博物館所蔵) 頭蓋骨(上)と下あご(下)

図1 福井県勝山市で発見されたゴニオフォリス類化石
   (中生代前期白亜紀)(福井県立恐竜博物館所蔵)
   頭蓋骨(とうがいこつ)(上)と下あご(下)


 現在の徳島県にあたる地域でも、かつてワニ形類は生息していました。当館が行っている勝浦町の恐竜化石発掘調査において、ワニ形類化石も発見されるのです。多数の遊離歯以外に、胴椎(どうつい:胴体部分の背骨)といった骨化石も発見されており、今後さらに追加標本が得られる可能性があります(図2)。これらについては、今後詳しく調査をしていく予定です。

 

図2 徳島県勝浦町で発見されたワニ形類化石(中生代前期白亜紀)遊離歯(上)と胴椎(下)

図2 徳島県勝浦町で発見されたワニ形類化石
   (中生代前期白亜紀)
   遊ゆう離り歯し(上)と胴どう椎つい(下)

 

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