博物館ニューストップページ博物館ニュース019(1995年6月25日発行)宍喰町竹ケ島周辺の地層と生痕化石(019号野外博物館)

宍喰町竹ケ島周辺の地層と生痕化石【野外博物館】

地学担当 中尾賢一

徳島県最南端の竹ケ島周辺の地域には、四万十(しまんと)帯の砂岩と泥岩の規則的な互層が分布しています。

これらは、室戸半島層群の奈半利川(なはりがわ)層に属する地層です。放散虫やナンノプランクトンなどの微化石から、新生代始新世中期(4000~5000万年前)に形成されたことがわかっています(石田、1993)。

この周辺の奈半利川層からは、貝などの大型の体化石はきわめて稀にしか見つかりませんが、いろいろな種類の保存の良い堆積(たいせき)構造や生痕(せいこん)化石(生物の活動の痕跡:巣穴や歩いたあとなど)は、ごくふつうに見られます。ここでは、国指定の天然記急物「宍喰浦(ししくいうら)の化石漣痕(れんこん)」と、ネレイテスという生痕化石についてご紹介します。

「宍喰浦の化石漣痕」(写真1)は、博物館2階の常設展示室入り口にレプリカが展示してあるので、ご存じの方も多いでしょう。一方向からの水の流れが砂層の表面(上面)につくった凹凸(おうとつ)のもようで、力レントリップル(水流漣痕)です。宍喰の漣痕は、そのなかでも舌状リップルというものにあたり、左下から右上への流れが読みとれます。漣痕は、天然記念物lこ指定されている場所(宍喰町古目(こめ))だけでなく、古目や竹ヶ島の数カ所で見ることができます。

写真1 国指定天然記念物「宍喰浦の化石漣痕」

写真1 国指定天然記念物「宍喰浦の化石漣痕」


ネレイテス(写真2)は代表的な深海の生痕化石で、ゴ力イのなかまの這(は)いあとなどといわれています。竹ヶ島ではしばしば目にしますが、古目にはないようです。リボン状で、規則的なくびれがあります。このあたりでは最も大きい生痕化石ですが、大きさにはかなりばらつきがあります。
竹ケ島には造礁(ぞうしょう)サンゴが生育していて、海中観光船で観察できます。また、宍喰町海洋自然博物館が建設中で、7月中旬には開館する予定です。今年の夏は、宍喰町の竹ケ島で、海洋博物館の見学やサンゴ・地層の観察にチャレンジしてみてはいかがでしようか?

写真2 生痕化石ネレイテス

写真2 生痕化石ネレイテス

なお、堆積構造や生痕化石は野外で観察することに値打ちがあります。しかし、一部は天然記急物に指定されている区域もあり、ハンマーはしまっておいて、地層をじっくり観察しましよう。

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