博物館ニューストップページ博物館ニュース032(1998年9月15日発行)阿波史跡公園周辺を歩いてみませんか?(032号歴史散歩)

阿波史跡公園周辺を歩いてみませんか?【歴史散歩】

考古・保存科学担当 魚島純一

徳島市の西部、石井町との境に近い国府町西矢野に阿波史跡公園があリます。1988年から徳島市によって整備が行われており、すでに「古代の邑」や「やまびこの森」などが完成し、発掘調査の終わった宮谷古墳(みやだにこふん)も保存修景されています。もともとこの付近、気延山(きのべやま)と呼ばれている山の麓一帯(図1)は、奈良・平安時代には国府(こくふ)(今日の県庁にあたる役所)がおかれた場所で、最近の発掘調査では、縄文~弥生時代の集落があったことがわかってきました。今回の歴史散歩では、阿波史跡公園周辺の遺跡などを紹介します(図2)。

図1気延山遠景

図1気延山遠景

図2周辺図、国土地理院1/25000地形図「石井」使用

図2周辺図、国土地理院1/25000地形図「石井」使用

 

公園の入り口は神社の鳥居が目印です。入り口から続く坂道を登りきったところに管理施設があります。目の前の坂道を下ると、復元された古代の家屋や高床式倉庫が見えてきます(図3)。

図3古代の邑

図3古代の邑

管理施設から少し左斜め後ろを振り返ると、谷をはさんで小高い丘が見えます。これが、徳島県内で唯、三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)が出土した宮谷古墳です。全長37.5m、後円部の直径25mの古墳時代前期の前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)です。発掘調査によって三角縁神獣鏡3面、鉄剣、ガラス玉などが出土しました。標高50mほどの墳丘の上に立つと、東側に広がる徳島平野を一望することができます。

管理施設から左に続く長い坂道を登り詰めたところには八倉比売(やくらひめ)神社があリます。この社殿の裏側にも大小二つの円墳があります。八倉比売神社古墳群です。

公園の北隣、変電所の向かい側に、今秋の開館を目指して工事が進められている徳島市立考古資料館が見えます。この資料館は、公園整備の一環としてつくられているもので、宮谷古墳の出土品をはじめ、鮎喰川の対岸に位置する名東遺跡(みようどういせき)から出土した銅鐸なども展示される予定であると聞いています。開館が楽しみです。

資料館の南、気延山の麓には大きな横穴式石室を持つ矢野古墳(やのこふん)があります。石室の入り口の前が削り取られ崖になっていて、入り口もかなり低くなっていますが、石室の中は広く、つくられた当時の姿を思い浮かべることができます。ただし懐中電灯がないと何も見えないので、念のため…。

少し歩けば、6年前に大きな銅鐸が出土した矢野遺跡、大量の木簡が出土して全国的に注目されている観音寺遺跡などもあります。国府の正確な位置はまだわかっていませんが、調査が進めば、近い将来、明らかになることでしょう。

阿波史跡公園周辺は狭い範囲に多くの遺跡が点在し、公園内もきれいに整備されているため、小さなお子さん連れでも楽しむことができます。秋の行楽シーズン、お弁当片手にご家族でぜひ一度足を運んでみてはいかがですか?。

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